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ハチドリのひとしずく

【経営の羅針盤 2021年9月】

「ハチドリのひとしずく」というお話をご存知でしょうか。

* * *
森で火事が起こりました。
獣も昆虫も鳥たちも、われ先に逃げました。
しかし、クリキンディという名前の1羽の小さなハチドリは留まりました。
そして、水辺と森を行き来して、くちばしに入れた水を一滴ずつ、火の上に落としました。
動物たちはそれを見て、「そんなことをして、何になるんだ」と笑い出しました。
クリキンディは答えました。「私は自分ができることをしているだけだよ」と。
* * *

もともと南米の先住民に伝わっている民話だそうですが、ビジネスのなかでの会話や企業研修でも、よく紹介されるストーリーです。
最近では、気候変動問題や環境問題に関して、一人ひとりが自分でできることから取り組みましょうという主旨で、取り上げられているようです。

企業経営における問題のなかには、様々な原因が複雑に絡み合い、どこから手を付けて良いのか見えにくいものが多々あります。
とりわけ、組織の活性化や、カルチャー変革に関わる問題は、多くの社員が漠然と問題を感じながらも、自分ひとりでは変えることができないと、諦められがちです。

しかし、職場の雰囲気が暗いと感じたら、まずは、隣の人に明るく話しかけてみる。
情報の共有が進まないと感じたら、まず自分から情報発信をしてみる。
本当は組織として取り組むべき顧客や社会の課題があるのに、なかなか手が付けられないならば、まずは、同じチームの仲間に、思っていることを話してみる。
そうした草の根からの動きが、変化の一歩になることもあります。

「思慮深く、献身的な、少数の市民が世の中を変えられることを疑ってはなりません。
実際に世の中を変えてきたのは、そういう人々にほかならないのです」

これは、アメリカの文化人類学者であるマーガレット・ミードの言葉です。
きっと仲間がいると信じて、クリキンディのように、自分ができることをやってみることが大切ではないでしょうか。

ところで、ビジネスケースとして、「ハチドリのしずく」を読むと、いろいろな発想が出てきます。

百獣の王であるライオン(=強いリーダー)を連れてきて、どうするかを決めてもらう。
賢いヒヒたちに集まってもらって、どうしたら延焼をくい止められるかを、話し合ってもらう。
そうは言っても、火は消えないから、別の森に引っ越す。

現実のビジネスを思い返すと、これらのアイデアの結果がどうなりがちか、容易に想像できます。
案外、本当に、一人ひとりができることに取り組むことが、最善の解決策なのかもしれません。

 

■KAIKAについて

日本能率協会では、個人の成長・組織の活性化・組織の社会性を同時実現することにより、新たな価値を生み出すことができるという経営・組織づくりの考え方として、2012年から「KAIKA」を提唱しています。①一人ひとりが自律的に考え、行動し、働きがいを感じる。②組織のなかで、ミッションやビジョンが一貫して、互いの連携が深まり、新しいことに挑戦する。③社会への感度を高め、社会に対して能動的に働きかける。そのような経営の考え方の普及に取り組んでいます。

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一般社団法人日本能率協会
KAIKA研究所 近田高志

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