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企業活動にSDGsを組み込むための目標設定のコツ

2020年11月25日

産業界からの関心が高まっているSDGs。
しかし、意義は理解できるが、企業活動への組み込み方がわからないという声も少なくありません。

今回は、SDGsを経営と統合するには何が必要か、日本のSDGs推進の第一人者である
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授に、国内外の取り組みと課題解決のヒントをお聞きしました。

※本稿では一般社団法人日本能率協会が発行している機関紙「JMAマネジメント2019年12月号」の掲載記事を、タイトルを変更してご紹介しています。尚、掲載記事は2019年9月19日に開催した「SDGsプレフォーラム」での基調講演の内容を再編集したものです。

ゴールへのやり方はいろいろある

SDGsは実装に向けたフェーズへ

国連加盟全193カ国の賛同のもと2015年にスタートしたSDGs。
4年めとなる2019年9月、国連SDGsサミットが行われ、首相もあらためてステートメントを発信しました。

助走期間は終わり、いよいよ実装に向けたフェーズになります。朝日新聞の調査によると、SDGsの認知率は27%。今年初めて2割を超えました。

日本社会全体でSDGsへの機運が高まっています。企業においてもSDGsに対する関心はこれまでにないほど高まっています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のESG投資が3・5兆円に達したことも、大きなインパクトでした。

また、内閣府が進める「地方創生SDGs金融」も注目されています。SDGsの活動を推進している地域の企業に金融支援を促す仕組みです。地域の中小企業にとっても、SDGsの取り組みが企業評価の重要な指標になりつつあるといえるでしょう。

SDGsを進める2つのポイント

SDGsを進めるにあたり、まず、2つのポイントを理解することが重要です。

1つめは、SDGsには「17の目標」と「169のターゲット」しか明記されていないことです。

つまり、2030年という未来の到達点は決まっているけれど、そこに至るまでのやり方は、国、自治体、企業、あるいは個人など、それぞれの当事者が自ら考え、取り組みの状況を測定し、評価し、次のアクションにつなげることが求められるのです。

2つめは、目標やターゲットが、それぞれ密接にかかわりあっているということです。

たとえば、暑いときに水を飲める環境を整えて人々の健康を守る、という企業活動は目標3「すべての人に健康と福祉を」や目標6「安全な水とトイレを世界中に」に貢献します。
しかし、その水がペットボトルに入っていたとしたら、目標13「気候変動に具体的な対策を」や目標14「海の豊かさを守ろう」にとってはマイナスといえるでしょう。

しかし一歩進んで、ペットボトルを使わず、大容量のウォーターサーバーで水を提供すれば、目標13や14へ貢献できることになります。しかも、ウォーターサーバーという新しいビジネスモデルも生まれ、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」や目標8「働きがいも経済成長も」に貢献します。

取り組みのねらいや結果が17の目標に複雑にかかわっているからこそ、2030年のありたい姿から全体を俯瞰してバックキャスティングで考える必要があるのです。

目標をどう設定するか

企業理念や創業時の志とSDGsの共通点を探す

では、具体的に目標をどう設定していくのか。さきほどの2つのポイントを踏まえることはもちろんですが、企業理念や創業時の志といったものに立ち返ることも重要です。
こうしたものにあたっていくと、社会にとってどういう存在でありたいかが必ず表明されており、SDGsと共通点も見つかるものです。

ライフサイクル全体で考える

また、自社の活動を短期的ではなく、ライフサイクル全体で考えること、つまり製品・サービスの商取引の瞬間ではなく、その前後のストーリー全体で考えていくことが重要です。

具体的な例として、原材料、サプライヤー、調達物流、操業、販売、製品の使用、製品の廃棄といったバリューチェーンから考えていく手法があります。この手法は「SDGコンパス」(GRI/グローバル・レポーティング・イニシアティブ、国連グローバル・コンパクトおよびWBCSD/持続可能な発展のための世界経済人会議の共同作成)でも紹介されており、SDGs推進のヒントとなるでしょう。

幅広いプレーヤーと協働する

もう1つ、ベンチマークしたいのが、内閣府のSDGs推進本部が発表した「SDGsアクションプラン2019」です。

これは、産学官による重要な取り組みが網羅されています。SDGs達成には、政府、自治体、民間企業、市民、大学・研究機関などの幅広いプレーヤーが協働することが期待されています。

単独で解決できないことを、さまざまな技術・知見・資金を組み合わせることが課題解決につながります。したがって、こうしたアクションプランを共有することで、協力者を見つけやすくなったり、株主や顧客などのステークホルダーの理解を得やすくなるでしょう。

中小企業だからこそ取り組めること

中小企業にとっては、目標設定や進捗の測定など、ハードルが高いと思えるかもしれません。大手企業ではSDGsを意識したマネジメントが強化されています。
こうした企業の取引先として、SDGsの取り組みを企業活動として位置付けることのメリットは、リスク管理の面からもこれからますます大きくなるでしょう。

また、中小企業だからできるやり方もあるはずです。神奈川県にある大川印刷という従業員約40人の会社では、SDGsを推進するにあたり、パートを含む全従業員を対象に社内ワークショップを実施。
各自の問題意識を全体で共有し、SDGsとの関連付けを行い、問題を解決するプロジェクトチームを従業員主体で立ちあげたそうです。このように全員参画で取り組むことは、取り組みの実効性という点でも大変有効です。

それぞれの会社にあったやり方で、一歩前に踏み出していただきたいと思います。



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