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人材戦略の成果を高めるカギは「人事部門体制の構築」

【経営の羅針盤 2021年12月】


 
資源の乏しい我が国においては、これまで、人を基軸とした経営を重視し、発展を遂げてきました。
しかし、今日ほど、人材の強化の重要性が高まっている時期は無かったのではないでしょうか。
日本能率協会が、毎年、企業経営者を対象に実施している調査においても、人材の強化を重要な経営課題として挙げる比率が増加しているという結果が見られています。

背景の一つには、やはり、デジタル技術の進化にともなう社会や産業、事業構造の変革があるでしょう。DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれ、それを実行するための人材の獲得、リスキルが不可欠となっています。また、そうした変化に対応していくためにも、従来の人事システムを大きく転換していく必要もあります。
二つ目の要因として、やはり少子高齢化の影響も大きいと言えるでしょう。景気動向に応じて求人倍率は短期的に増減しますが、長期トレンドとして日本の生産労働人口が減少することは確実なことであり、いかにして生産性を高めていくか、働き方を変革していくかは、依然として重要な問題です。

そして三つ目に、働くことにおける個人と組織の関係の変化が挙げられます。働くことへの人々の価値観が変化し、兼業や副業も含め、就労形態も多様化しています。また、企業経営において「パーパス」(企業理念・志)が注目されていますが、働く一人ひとりにとっても、自分自身の価値観と照らして、勤務先のパーパスに共感できるかどうかが重視されるようになっています。いかに、企業の使命・志と一人ひとりの仕事の意義を結び付けながら、社会にとっての価値を生み出していくか、そして、社員のエンゲージメント、ウェルビーイングを高めていくか。これからの経営・組織づくりにおいて、大きなテーマとなっています。

こうした状況を踏まえながら、いかにして、持続的に価値を生み出す経営を実現していくか。そのためにも、あらためて、人材戦略を再構築していく必要があると言えるでしょう。
それでは、いかにして、人材戦略の成果を高めていくか。そのカギを探るために、今年の調査では、「これからの時代の人材戦略」を特集テーマとして取り上げて、分析を行いました。

具体的には、設問を通じて回答企業を人材戦略の成果状況における高位群・中位群・低位群にグループ分けをし、そのうえで、人材戦略の成果を高めるために必要と思われる要素を仮説として設問を設計し、それらの分析を通じて、人材戦略の成果を出している企業の特長を探りました。

結論を述べると、今回の調査において仮説として設定した
(1)経営戦略と人材戦略を連動させること
(2)自律的な成長や学習を重視する組織風土を醸成すること
(3)人を活かす組織を実現するための人事施策を実行すること、そして
(4)経営に貢献する人事部門体制を構築すること
の4つの要素の全てにおいて、人材戦略の成果状況における高位群の方が、当てはまる傾向が強いということを確かめることができました。

さらに、興味深いのは、特に4番目の人事部門体制の構築がカギとなっていることです。上記の仮説に関する回答結果を共分散構造分析という方法で読み解いた結果、4つの要素が相互に関わり合いながら人材戦略の成果につながっているなか、「人事部門体制を構築すること」が出発点となっているということが見い出せたのです。

【図表】人材戦略の成果を高めるためのモデル(共分散構造分析の結果)

この「経営に貢献する人事部門体制の構築」の要素については、関連する9つの設問を尋ねていますが、人材戦略の成果における高位群と低位群で、当てはまる傾向の差異が特に大きかった項目は、以下の3つでした。

第1位:人事スタッフの能力要件が明確になっており、育成する仕組みが整っている
第2位:人事部門責任者は、人事部門としてのビジョンを打ち出し、スタッフへの期待を明確にしている
第3位:人事部門の組織体制・要員は十分に整っている

上記の通り、人材戦略の成果を高めるためには、経営戦略と人材戦略を連動させ、必要な施策を着実に実行していくことが求められるわけですが、そのためにも、そうした人材戦略を策定し、実行する人事部門体制をつくることが重要であり、人事スタッフ自体を育成していくことがカギとなっているということになります。

人事部門においては、経営や事業に貢献する「HRビジネスパートナー」という機能が重視されるようになり、実際に役職としても広がりつつありますが、具体的に求められる役割や要件については、まだ手探りの状況にあります。人材戦略の成果を高め、企業の持続的成長、そして、働く一人ひとりのウェウビーイングを実現するためにも、人事部門の役割を問い直すことが重要になっていると言えるでしょう。

※本調査の詳細については、下記のウェブサイトに掲載している『2021年度 第42回 当面する企業経営課題に関する調査報告書』をご参照ください。
https://www.jma.or.jp/activity/report.html

一般社団法人日本能率協会
KAIKA研究所 近田高志

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