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「Z世代」を自律型人材に育てるOJT~2020新入社員意識調査から~

2020年10月28日

2020年4月。コロナ禍で新入社員の受け入れ環境が十分に整わない中、新入社員研修を進めなければならず、途方に暮れた人事担当者、教育担当者は多かったのではないでしょうか。

多くの新入社員が数か月を経て各部門に配属となるこのタイミング。
従来は研修を通じて、あるいはオフィスで働く中で自然に身に付けられた、ビジネスマナーやビジネスパーソンとしてのマインドセットなどが、在宅勤務や研修のオンライン化など、予期せぬ環境の変化により、十分習得できていない可能性があります。

今年のOJTは、新入社員研修を十分な環境で実施できなかった企業にとっては、一人前の社員を育成するためにいつも以上に重要なフェーズになると言えるでしょう。

しかし、いわゆる「Z世代」である2020年新入社員との価値観の違いに、どう接していいか戸惑っている先輩、上司の方もいるかもしれませんね。

JMAでは毎年4月に「新入社員意識調査」を行い、年々の新入社員の仕事・キャリア観を調査してきました。今回は2020年調査結果をもとに、彼らの仕事・キャリア観の傾向を紹介したいと思います。
また、本記事の後半では、意識調査結果を踏まえ、どのようなOJTの進め方が効果的かまとめました。

2020年新入社員は、スペシャリスト志向で実力・成果主義?!

AIやデータサイエンス等、デジタル技術の進化などにより、より高度な能力・スキルが求められる時代になるなか、「ジョブ型雇用」を模索する議論も広がっています。加えて、新型コロナ感染拡大により、雇用情勢は不安定になっています。こうしたことが、新入社員の仕事やキャリアに対する考え方にも一定程度の影響を及ぼしていると考えられます。

「2020年度 新入社員意識調査」から、まずは特徴的な3つの結果を紹介します。

①スペシャリスト志向が強い

働き方について、「A:一つの仕事を長く続けて専門性を磨きたい」、「B:いろいろな業務を経験し、仕事の幅を広げたい」か、を聞いたところ、「A」のスペシャリスト志向が 63.9%(「A」「どちらかというとA」を合算)となり、昨年よりも増加しました。

②実力・成果主義>年功序列

働きたい職場について、「A:個人が評価され、年齢・経験に関係なく処遇される実力・成果主義の職場」か、「B:競争よりも、ある年代まで平等に処遇される年功主義の職場」のどちらで働きたいかを聞いたところ、「A」の実力・成果主義志向が 66.1%(「A」「どちらかというと A」の合算)となり、この 10 年で過去最高の結果となりました。

③働く目的「仕事を通じてやりがいや充実感を得ること」がトップ

自身の働く目的について聞いたところ、「仕事を通じてやりがいや充実感を得ること」(52.8%)
トップとなり、約半数が選ぶ結果になりました。

また、第 2 位には「自分の能力を高めること」(42.3%)、第 3 位には「社会の役に立つこと」(34.5%)が挙げられています。

今後、新入社員が入社した企業に定着していくためにも、自社の経営理念や社会的使命を伝えるとともに、担当業務がそうしたこととどう結びついているのか意味付けをし、理解を深めていくことが重要になります。

調査に見る2020年新入社員の特徴、ちょっと受け身?な一面も

これら調査の結果から、2020年の新社会人はとても自立しており、今後主流になるであろう新たな働き方の感覚をすでに自身の中に持っているようにも見えます。

しかし、一方で次のような結果も出ています。

①これから身につけたいスキルは「業務上必要な専門知識・技術」
主体性や企画力は大幅に低下

これから身につけたいスキルを聞いたところ、全体では、「業務上必要な専門知識・技術」が 46.9%と最も高く、「コミュニケーション力」が 40.7%、「ビジネスマナー」が 27.7%、「語学力」が 24.8%と続きました。

時系列でみると、「業務上必要な専門知識・技術」を挙げる割合が高くなっており、「語学力」については、2019 年調査より増加し 2018 年調査と同程度となっています。
逆に「企画力」「主体性」を挙げる割合が低くなっています。

②理想の上司は「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」

「理想の上司・先輩像」を聞いたところ、

「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(59.3%)、
「仕事の結果に対するねぎらい・褒め言葉を忘れない上司・先輩」(33.2%)、
「言動が一致している上司・先輩」(32.9%)

の順になりました。

上位 3 つの項目・順番に昨年と違いはないものの、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」が 6 割近くを占め、昨年より 14.8 ポイントもあがっています。

新型コロナウイルスの影響で、今年は入社式を中止、オンラインにするといった対応をとった企業もありました。新入社員にとって、着実に仕事に必要な能力やスキルを身に着けていくうえで、例年とは違って、上司・先輩と接する機会が少なくなるのではないかという戸惑いや不安から、丁寧に指導・フォローして欲しいという思いが強く出たのではないかと推察されます 。

③指示が曖昧なまま作業をすることには抵抗がある

抵抗なく出来る事柄について、8 項目を挙げて質問しました。その結果、「抵抗があること」に浮かび上がったのは、ポイントが高い順に

「指示が曖昧なまま作業をする」(89.9%)
「飛び込み営業」(87%)
「知らない人・取引先に電話を掛ける」(73.9%)

となりました。

デジタルネイティブとも言われ、価値観やコミュニケーションスタイルも従来と異なる「Z世代」には、一方的に従来的な方法を押し付けるのではなく、多様な価値観を包摂していく観点での対応が求められています。

④志向しているキャリア観と現状にギャップがある

これらの結果だけ見ると、2020年の新入社員は、目指しているキャリアや働き方を実現するために必要な要素は、自ら獲得するのではなく与えてもらうもの、という少し受け身な印象も受けます。3月まで学生だった彼らには当然の感覚かもしれませんね。

「ニューノーマル時代の人材と人事マネジメント」の記事の中で、守島基博教授は、リモートワークなどの普及によって、今後、組織は一人ひとりが自律し分散して働きながらも、協働して成果をあげていく自律・分散・協働型になっていくと予想しています。

そしてそこでは、上司に指示されたことを粛々とこなす人材ではなく、自分で目標を設定し、自分でペースをコントロールしながら、目標を達成していく自律的な人材が評価されると述べています。

つまり、これからの社会で「スペシャリスト」として「成果主義」の中で活躍していくには、高度な技能の習熟だけではなく、未だ誰も挑戦していないことに、自身で仮説を立て、主体的に道筋を作って行動していくスキルが不可欠になってきます。

今回の調査結果に沿って、何でも手取り足取り教えても、彼らが目指す姿に到達することは難しいでしょう。だからといって「自分で考えろ!」と突き放してしまっては、育つどころか離職につながりかねません。

コミュニケーションは密にとりながらも、新入社員たちが重要性に気づいていない「主体性」や「課題設定」「セルフマネジメント」といったスキルを向上させる働きかけを行っていくことで、組織で活躍できる人材が育ち、新入社員自身も目指す姿に近づくことができます。

自律型人材を育てるOJT、4つのポイントとは

では、配属後、先輩や上司は、どのような点に気を付けて教育を進めれば、新入社員は安心して職場に溶け込み、早く実力を発揮することができるのでしょうか?
「OJT研修「相互成長力」強化編」のプログラムからそのヒントを見ていきたいと思います。

①おたがいのバックボーンを知る

価値観の違いに戸惑っているのは、教育担当者だけではありません。
新入社員も自分たちと異なる先輩たちの考え方に疑問を感じたり、戸惑いを覚えます。しかし上下関係を考慮すると自分からは言い出しにくいですよね。

「社会人とはこういうものだ」と断言して先輩の意見を押し付けるより、どういった背景や価値観を大切にして、その考え方に至っているかを明確に説明することが大切です。
同時に新社会人の考えやその背景も聞いてみましょう。お互いに見落としている点が補完できるかもしれません。

何より最初にお互いの違いを明確にし受容しておくことで、一緒に仕事を進めていく際、格段に働きかけやすくなるのではないでしょうか?

②質問上手になる

前述の通り、「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」が求められていますが、これはすべての手順を説明する、ということとは限りません。

ある仕事について、目的は明確に伝えた上で、進め方については答えを与えるよりも、引き出すというスタンスで指導に当たってみてはどうでしょうか?

「なぜそう思ったのか?」
「それに対してどのような取り組みが必要だと思うか?」
「具体的にいつまでに何をするか?」

など、質問を繰り返し、その回答を新入社員本人の担当業務に実際に落とし込んでいくことで、自分自身で考えて行動できるようになりますし、本人の納得度も高まります。

仕事は学校と違い答えは一つではありません。失敗はなく、答えに到達するための方法が無数にあるだけです。答えを与えるのではなく、根気よく答えを引き出し続け、応援し続ける「質問上手」が課題設定と問題解決できる能力を育みます。

③「やる気が出る」伝え方を知る

新入社員意識調査が示すのはあくまで傾向にすぎません。
当たり前ですが新入社員一人一人の特性は異なります。その特性によって効果的な指導は変わってきます。

例えば、本人のモチベーションを上げる時にも「ぜひ、あなたにお願いしたい」と伝える方が効果的な人もいれば、「部署のメンバーがとても助かる」と言う方がやる気が出る人もいるでしょう。

①にも通じますが、指導する新入社員がどんな投げかけに反応しやすいのか知っておけば、同じ指導内容でも伝え方を少し変えるだけで効果が変わってきます。

ビジネス上の対人コミュニケーションを円滑にするためにエゴグラム(性格診断)を活用することがありますが、OJTにおいても、こういったツールの活用は有効です。

④ペアで育成計画を作る

最後に提案したいのが、OJTリーダーと新入社員のペアで育成計画を作るということです。

OJTリーダー単独で育成計画を作るケースが多いと思いますが、育成計画を作るプロセスに新入社員本人が関わることで、どういう育成上のねらいやスキルの獲得を目的に、自分はこの業務を行うのか、ということが予め共有できます。

「指示が曖昧なまま作業をすることには抵抗がある」新入社員にとって納得感を持って業務が進められることは重要ですし、業務を通じて到達すべきレベルが分かると取り組みの真剣度合いも変わるでしょう。

新入社員もOJT担当も相互成長の機会に

新入社員というある意味異質な存在を受け入れ、育成していく過程は、OJT担当者自身にとっても成長の機会です。

ダイバーシティというと性別や国籍等を思い浮かべがちですが、ジェネレーションも多様性のひとつ。若さ=未熟とだけ捉えるのではなく、デジタルネイティブと呼ばれる世代から貪欲に学んでいくこともできるかもしれません。

本記事が、新入社員も先輩も相互成長できるOJTの参考になれば幸いです。

(参考)2020年度 新入社員意識調査報告書
https://event.jma.or.jp/dl_newemployees

OJT研修「相互成長力」強化編
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=151408



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