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テレワークでも部下のメンタルヘルスはケアできる

2020年9月13日

2020年は私たちの環境が劇的に変わった、歴史的な年となりました。

テレワークや社内でのソーシャルディスタンスなどの働く環境の変化は、一過性のものではなく、少なくともこれから数年は続くと予想されます。中には、今後のスタンダードとして「常態化」していくものもあるでしょう。

また、コロナ打撃による経済の低迷もすでに始まっています。これがいつまで続くのか、自分や自分の会社は乗り越えられるのか、先行きの不透明さに不安を覚えている人も多いと思います。

こうした環境変化はビジネスパーソンのメンタルヘルスにも影響を及ぼすと考えられます。

変化になれなかった当初よりも、じょじょにこの状況が定着してきたこのタイミングで、「心の疲れ」が顕在化してくるのではないか、とプレイバック・シアター研究所 所長 羽地朝和氏は指摘します。

メンタルヘルスの不調は、本人だけの問題ではありません。
もちろん本人の心身の健康維持が一番大切ですが、メンタルヘルスの不調による会社へのエンゲージメントやモチベーションの低下は業績にも反映されます。

マネージャーやリーダークラスの方は自分自身のメンタルケアはもちろんのこと、チームのメンバーのちょっとした異変にも気づき、メンタルをケアしていくことが求められます。

ただし、テレワークが導入されているケースなどはメンタルケアの方法自体も今までと変えていく必要があります。

この記事では

  • コロナによる環境変化は従業員のメンタルヘルスにどのような影響を及ぼすのか。
  • 管理職は従業員の異変に対しどのように気づき、対処すればよいのか。

について、プレイバック・シアター研究所 所長(日本能率協会 専任講師)羽地朝和氏にお話を伺いました。

※この記事では一般社団法人日本能率協会が発行している機関紙「JMAマネジメント 2020年8月号」の掲載記事をご紹介しています。

 

 

企業の3つのパターン

ここ数カ月で研修に携わった企業を見ると、新型コロナウイルス禍にどう対応していいかわからず萎縮している企業、逆にコロナ禍をビジネスチャンスとして前向きに捉えている企業、新たなビジョンがないまま、いま頑張れば乗り切れると考え無理をしている企業の3つに分かれるようです。

このうち、従業員のメンタルヘルス上の問題が最も表面化する可能性があるのが3つ目のパターンの企業です。

特に部下の仕事に対し細かく干渉する「マイクロマネジメント」を行いがちな中間管理層の疲弊感が顕在化するかもしれません。

なぜならコロナ禍に対応するため導入したテレワークによって部下の情報が入手しづらくなり、結果としてイライラが増長されてしまうからです。

なかでもテレワークが増えてきたときに注意しなればならないのがアルコール依存症です。
アルコール依存症予備軍とされる人たちがコロナ禍によって発症するリスクが高まっています。

コロナ禍が起きる前は仕事に多くの時間を割いていたので、飲酒の機会や量が抑えられていました。
しかし、在宅勤務によって仕事以外の時間ができたことでこれらが増えてしまい、発症の引き金を引いてしまう可能性があります。

特に独り暮らし、または単身赴任中の中間管理層のリスクが大きいと私は考えています。
従来は顧客や部下と顔を合わせることがモチベーションや自己管理につながっていましたが、コロナ禍によって対面する機会が断たれてしまった上に在宅勤務中は話をする相手が誰もいない。

その結果、孤独や不安から飲酒に走ってアルコール依存症に進行してしまう可能性があります。

 

「うつ」が把握しづらい

「うつ」にも注意を払う必要があります。

コロナ禍によって人と直に接する機会が大きく制限され、やりがい、働きがい、達成感を実感できなくなることで、従業員が「うつ状態」になりやすくなるのです。

テレワークをしているとチーム全員で目標達成を喜ぶといった感情の共有化もできなくなります。
喜びや悲しみなどの感情をもてなくなり、漠然とした不安が重なって「うつ状態」に陥ってしまう。これが実は大きい。

オンラインミーティングなどテレワークの仕組みを構築していたとしても、それを日常的に使っていない会社は従業員の「うつ状態」を見逃しがちですが、テレワークの仕組みが機能している会社も安心してはいられません。

「うつ状態」になった従業員は自分がそうであることを自覚できませんし、仮に自覚できたとしても自分が「うつ」であることを自ら上司には伝えないからです。

「うつ状態」になった従業員からの自発的な報告はまずないと考えていいでしょう。
テレワークの仕組みがあっても、部下が業務報告を上げない日が続いて初めて管理職が部下の「心の不調」に気づく、といったこともありえます。

 

部下の異変を感じ取れ

といっても、オンラインでも従業員のメンタルヘルスケアは十分に可能です。

研修などで必ずお話しするのは、ZoomやTeamsなどのウェブ会議システムを活用し、管理職が週1回15分でもいいので、部下と1対1で顔を見ながら話をする機会を継続的につくってください、ということです。

話す内容は必ずしも業務に関連する必要はありません。雑談でもいいんです。ポジティブでもネガティブでもいいので感情を共有するやり取りを増やすことが重要です。

テレワークであっても会社とつながっている感覚が重要だからです。
コロナ禍が起きる前、会社への帰属意識や一体感は特に意識をしなくても「職場」に行けば得ることができました。
それが制限される現在にあっては、オンラインでのface to faceのコミュニケーションを通じて共通の場を意識的につくらなくてはなりません。

確かにオンラインコミュニケーションは対面の場と比べて感情のやり取りが十分にできない面があります。
しかし、オンラインのコミュニケーションにおいても部下の感情を感じ取ることは可能です。

たとえばオンラインミーティングを定期的に行っていると画面からも髪がボサボサだったり、目が腫れぼったかったり充血していたり、顔の表情が乏しかったりすれば部下のメンタルヘルス上の異変を察知できるようになります。

元々は積極的に話す部下が言葉数が少なくなったり、部屋が散らかっていることを理由にビデオをオフにしたりしている部下がいれば、それも異変のサインと捉えることができます。

今後、管理職は従来にも増して、指摘するしないは別として、部下の言動や感情の変化に対する感度を上げることが求められるでしょう。

「何かあったらいって」「最近どう?」の待ちの姿勢の呼びかけだけではマネジメントは機能しません。

 

「待ち」から「介入」へ

テレワーク中の従業員にメンタルヘルス上の不調が起きると企業として対処がとても難しくなります。

オンラインミーティングの参加を拒否されると、本人の状態を把握できませんし、離れているため手の施しようがありません。
コロナ禍の前であれば産業医への相談を勧めることもできましたが、それもできません。

いままでは相談があるまで「待って」対応していたメンタルケアですが、これからは予兆を察知するために積極的に「介入」していくことが必要です。
管理職だけでなく企業のメンタルヘルス担当者も、このことを十分に認識してほしいと思います。

特にアルコール依存症や「うつ」の問題が顕在化するのは、夏場の疲れが出始める9月頃からではないかと私は考えています。

従業員のメンタルヘルスケアの観点からも、経営層は1日も早くテレワークの仕組みを十分に機能させ、管理職はこの仕組みを最大限に活用して部下とのかかわりをもつことが求められます。

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