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「働く人を幸福にする」データ分析、ピープルアナリティクスとは?

2020年12月16日

組織・企業の存続や成長を考える上で「働く人の幸せ」に注目する動きが広がっています。

さらにその「幸せ」を様々なデータ分析を用いて定量的に把握し、組織課題の解決、改善に役立てることができるのをご存知でしょうか?実はすでに組織における「働く人の幸せ」と「つながり」と「生産性向上」には深い相関があることがデータ分析結果からわかってきています。

リモートワークなどの環境においても人材活用や組織活性化を進めていくために、今後、人事領域でも「人」に関するデータ活用・分析の必要性が増していくと予想されます。

では、具体的にデータからどのような課題が分かり、どのように解決していけばいいのでしょうか?

今回は、ピープルアナリスト 大成弘子氏に、働く人々の幸福に関するデータ活用についてお話を伺いました。全4回にわたり沢山の事例を交えながらご紹介していきます。

大成 弘子 氏
ピープルアナリスト

<プロフィール>
「働く人々を幸福にする分析」を自分の生涯のミッションとして掲げる。2013年にSNS上での人間関係はリアルとどう違うのかネットワーク分析の論文をPLoS ONEで発表、翌日にMIT technology Reviewにも取り上げられる。
2014年に広告会社の新規事業部にピープルアナリティクスサービスに従事したことがきっかけでピープルアナリストとしての仕事をスタートする。
2018年より一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会研究員に就任。2019年成城大学データサイエンス教育研究センターアドバイザリー委員に就任。著書として、『データサイエンティスト養成読本~ピープルアナリティクス入門』2018年、『データサイエンティスト養成読本~ソーシャルメディアネットワーク分析』2016年、『プログラマのための論理パズル』(翻訳)2009年、「採用と活躍の技術」WirelessWire News(Web記事連載)2018年

※本記事は大成氏が登壇したJMAマネジメント講演会「リモートワーク時代の、人を活かし、組織を良くするデータ活用の在り方~組織のつながり方と働く人の幸せ~」の講演内容をまとめたものです。

ピープルアナリティクスとは?

経営者、人事、現場マネージャーにも関わる領域

私はピープルアナリストという、人を中心にした分析をしています。
主にHR人事領域、学問領域としてはネットワークサイエンスの人間関係を分析しています。

今回は、ピープルアナリティクスとはどんなものなのか、なぜデータ分析が必要なのか、そしてリモートワークになって企業から受け取った課題への提案などをご紹介していきます。

ピープルアナリティクスとは、もともとマネーボールという野球のセイバーメトリックスの世界で始まったといわれています。

その後、グーグルが2007年に人事部をピープルオペレーション部と名付けたことから、人に関する分析ということで、ピープルアナリティクスという言葉がビジネスの世界でも登場します。

日本では2013年に「職場の人間科学」という本が出版され、ここから一気に世界中にピープルアナリティクスという言葉が広まっていきました。

特に最近では、職場における人の分析という意味でピープルアナリティクスという言葉が使われることが多いです。

ピープルアナリティクスに関わる人々というのは、決してその分析者だけではなく、今日ご参加頂いている経営者、人事、あるいは現場のマネージャーという方々と関わってきます。

ピープルアナリティクスは「働く人を幸福にする分析」

ピープルアナリティクスは職場における人の分析ではありますが、私なりの定義として、働く人々を幸福にする分析であるという風に定義しています。

なぜこの幸福ということを定義しなければならないのか。

人事、例えば採用担当は、人を採用すればいいだけだとするとそれ以上何も生まれません。
人を採用するだけの担当者から、社員を幸福にする仕事である、という風に一つ視座を上げていただくと、一人を採用するにも、会社全体が良くなるにはどういった人を採用したらいいかという視点を持てます。

人事とは何かというときに、社員を幸福にする仕事という視点を持って取り組んでいただくとより良い仕事が出来るのではないかと思っています。

人事の三大課題の犯人捜しをやめる

働く人々を幸福にするという視座に立った時、人事の三大課題と言われるものにも異なる解が見えてくることがあります。

人が採れない、辞める、機能しないという三つの課題です。

これについていろいろと話していきたいと思いますが、この視座に立っていないとどういうことが起きるのか。

犯人探しになってしまいます。例えば、人が辞めるのは現場のマネージャーのマネージメントが悪いせいだ、人事は能力がないから困る、採用ができないのは人事のせいだ、というようなことです。

一方、現場が人が辞めるのは現場のせいだ、上司と相性が悪くてモチベーションが下がるわ、というような話もよく耳にします。

私などは、分析を依頼されておりますので、分析って何か意味あるんだっけ、ということを言われてしまう可能性もあります。

なぜデータ分析が必要なのか?

無意識のバイアス

なぜ分析が必要なのかというところですが、無意識のバイアスということを考えてみたいと思います。

ここに二人のレジュメがあるとします。この二つ中身は実は全く同じで、違うのは名前だけです。
田中太郎さんと田中花子さんという二人のレジュメが書いてあり、ここに性別年齢は書いていませんが、太郎さんはきっと男性であろう、花子さんはきっと女性であろうという風に人間は思うわけです。

そうすると製造業のレジュメであった場合に、田中太郎さんが採用されやすいということが実際に起きています。

このように人には無意識のバイアスがあるので、しっかりデータで見ていかなければいけないという話です。

データや事実に基づいて世界を読み解く力を

ここで少し皆さんに考えて頂きたいと思います。横軸が三つのグループに分かれています。

子供は十歳ぐらいの小さい子供、真ん中が若者ですね、20代若者くらい、一番右側が大人であるとした場合に、それぞれ報酬が大きい時大きい時小さい時中くらいの時にどのように脳が反応するかというのを計測したデータです。MRIで測ったものですね。

大人は非常に分かりやすいんですが、報酬が小さい時、脳が感じる報酬も小さい。逆に報酬が大きければ脳の反応も大きい。要は相関しているという結果になるわけです。

一方で子供に関してはどういう状態か。報酬が中くらいの方が一番大きいのですが、子供の場合はほぼ変わりがありません。報酬の大きい小さいが判断できない年齢の時には、全ての報酬を等しく脳は感じています。

では、20代の若者はこの三つの報酬にどのように反応していると思いますか?

正解は、なんと小さい報酬に関してはマイナスに感じてしまうんです。

例えば、中小企業の社長さんなどはなるほどとおっしゃる話なんですけれども、中小企業がそれ程お給料を上げられないけれど頑張ってくれたからということで、5000円とか1万円といったちょっとしたものを報酬として与えた場合に、20代の若者はそれをどう捉えるでしょうか。

これがマイナスになるのは、なぜかというと「俺のやったことってそれぐらいしか評価されないのか」と感じてしまうという話なんですね。

一方で大きい報酬に関してはどの世代よりも一番大きく感じます。

例えば、ベンチャー企業に勤める若者は、大人が見えている世界よりももっと大きく見えており、それが大きな原動力になっているために、「俺はあの報酬のために頑張るんだ」という風になるわけです。

このように、年齢が異なることによって脳の動きが違うということもあり、大人になってしまうと忘れてしまって大きい小さいで相関するという状態が起きますが、実は20代の若者は同じではない。頑張ってくれたからといって若者に少しボーナスをあげるということが、かえってマイナスになってしまうということを知っていれば、いろいろな施策をとることができます。

なぜ分析が必要かというと、このようにデータや事実に基づいて世界を読み解く力をつけられるからです。

バイアスを回避するために

少し前、ファクトフルネスという本が売れましたが、人間には色々なバイアス、本能があると書かれていました。例えば、分断本能とか、パターン化本能、ネガティブ本能、前述の犯人捜し本能などいったものです。

こういった本能を回避して、間違った判断をしないために、分析からより真実に近いことを見ていく必要があります。

次回は仕事のパフォーマンスと幸福の関係について紹介していきます。興味のある方はぜひメルマガにご登録ください。



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