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ピープルアナリストが語る、仕事の生産性を高める幸福とは?

2020年12月17日

この記事では、「働く人々の幸福に関するデータ活用」をテーマにとりあげた、ピープルアナリスト 大成弘子氏の講演を全4回にわたってご紹介しています。前回の記事(「働く人を幸福にする」データ分析、ピープルアナリティクスとは?)に続き2回目となります。

第2回目となる今回は組織における「幸福」と「パフォーマンス」の関係に注目します。また、この幸福を作り出す「ネットワーク」の特徴についてもデータ分析の事例を通して考察していきます。

第1回 「働く人を幸福にする」データ分析、ピープルアナリティクスとは?
第2回←【今回はココ】 ピープルアナリストが語る、仕事の生産性を高める幸福とは?
第3回 ピープルアナリストが語る、リモートで組織のつながりを強化する方法
第4回 ネットワークで解決!在宅勤務のコミュニケーションとパフォーマンス課題

大成 弘子 氏
ピープルアナリスト

<プロフィール>
「働く人々を幸福にする分析」を自分の生涯のミッションとして掲げる。2013年にSNS上での人間関係はリアルとどう違うのかネットワーク分析の論文をPLoS ONEで発表、翌日にMIT technology Reviewにも取り上げられる。
2014年に広告会社の新規事業部にピープルアナリティクスサービスに従事したことがきっかけでピープルアナリストとしての仕事をスタートする。
2018年より一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会研究員に就任。2019年成城大学データサイエンス教育研究センターアドバイザリー委員に就任。著書として、『データサイエンティスト養成読本~ピープルアナリティクス入門』2018年、『データサイエンティスト養成読本~ソーシャルメディアネットワーク分析』2016年、『プログラマのための論理パズル』(翻訳)2009年、「採用と活躍の技術」WirelessWire News(Web記事連載)2018年

2021年日本能率協会主催「信頼力をあげて組織のパフォーマンスを最大化する方法」研究交流会ではメインファシリテーターをつとめる。

※本記事は大成氏が登壇したJMAマネジメント講演会「リモートワーク時代の、人を活かし、組織を良くするデータ活用の在り方~組織のつながり方と働く人の幸せ~」の講演内容をまとめたものです。

幸福状態はダイナミックに変化するものである

「幸福」の定義

幸福とは、という非常に広いテーマですが、定義を確認しておきましょう。

幸福学という学問領域があり、そこで言われている幸福の定義を参考にしたいと思います。まず、英語の「ハッピー」という言葉。ハッピーというのは、どちらかというと気分や感情など、短いスパンの心の状態を指します。

「ウェルビーイング」も最近非常によく聞く言葉ではないでしょうか。こちらは、豊かな人生とか良い人生といった、長いスパンの状態を指している言葉です。

「ポジティブサイコロジー」という言葉がありますが、こちらは心理学のアプローチで、ポジティブ感情からアプローチを試みていくことです。

そして最後に「ハピネス&ウェルビーイング」。学術領域である幸福学では、短期的な幸福と長期的な幸福というものの両方を見ていきましょう、ということでこの言葉が使われています。

幸福状態は、ダイナミックに変化し続ける

一方、国連機関WHOが定義するウェルビーングを見ると、「健康とは、病気であるとか弱っていることではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態にあること」と言っています。健康とは単純に体が元気であるだけではなく、精神的にも社会的にも満たされている必要があり、それが幸福状態ですよという話なんですね。

実は、1998年には採択されなかった定義というのがありまして、そちらの方が実際の幸福に近いのではないかと思っています。

(※大成弘子氏 講演資料より)

英語だと二つのワードが追加されているのですが、一つは「ダイナミックステート」。すべてが満たされた状態ではなくて全てが満たされたダイナミックな状態であること、動的な状態にあって、静的ではないと言っています。

もう一つ、肉体的にも精神的にも、ということで、「スピリチュアル」という単語が追加されています。日本ではスピリチュアルというと、若干の怪しさを秘めたワードとして受け止められますが、海外ではスピリチュアルとは魂の健康という意味で、最近では瞑想、マインドフルネスなど、そうしたものを通じて得られるものをスピリチュアルと言います。

当時の日本ではスピリチュアルという言葉の概念というものがマイナスに受け止められる社会だということもあり、結局は採択されませんでしたが、おそらく今であれば採択されるのではないかなという風に思っています。

「幸福状態というのは、ダイナミックに変化するもので、苦しい時もあれば楽しい時もあって、その中で感じられるもの。」

つまり幸福という絶対的なゴールはないわけです。人によって幸福状態は様々ということになります。

会社の中での幸福

例えば、会社の中で「幸福」について語る時、「エンゲージメント」という言葉がよく使われますが、エンゲージメントがマックスの状態というのはない、ということも言えます。

仕事をしている中で、すごく大変な時もあるだろうし、何か褒められて嬉しい時もありますよね。そういうことが日々繰り返されていく中で、その状態が総じて良い状態であるというのが幸福状態であると言えます。

会社の幸福状態を上げたいと思った時に、最大マックスになることを目指すのではなく、ダイナミックに変化しながら幸福な状態に向かっていくイメージで設計すると良いと思います。

小さな幸福を継続することが大切

幸福は生産性を高める

幸福についての研究でわかったことをいくつかご紹介したいと思います。

例えば、幸福な社員というのはパフォーマンスが高いということは感覚でも分かりますが、実際にデータにも出ています。

幸福感の高い社員は平均で生産性が31%高く、売り上げも37%、クリエイティビティは3倍高いという結果が出ています。

(※大成弘子氏 講演資料より)

人生の満足度が高い従業員が働いている小売店の利益は、店舗面積利益が21ドルも高い。幸福と人生満足度が高い従業員がそのお店にいるだけで、お店の売り上げが上がっちゃう、という話です。

この領域はネットワークサイエンスが対象としている部分でもあるので、面白いデータだなと個人的には感じています。

また、一貫した小さな幸福の継続が大事と言われています。宝くじが当たるような一過性のことではなくて、例えば毎日のご飯が美味しいと感じる方が幸福度が高いと言われています。

組織における幸福とは何か

では、組織における幸福とは何でしょうか?一過性と継続性で分けて考えてみました。

一過性の幸福だと給料アップや、昇進昇格、会社の経営状態、業績、福利厚生が挙げられます。後、ノー残業なども一過性に過ぎないですね。

継続性のある幸福は、感謝や賞賛、期待、裁量権、共感、成長実感だと言われています。

皆さんが人事施策を検討する時に、一過性の幸福で挙げた内容は、手軽にできるためよく採用されると思うのですが、継続的に会社の状態を良くしたいのであれば、賞賛や期待、裁量権、成長実感という要素に着眼して行った方が効果的と言えます。

継続性のある幸福に関する項目をデータ分析に加える

HRアナリティクスや人事分析として、説明変数としてよく使われるデータは、一過性の幸福を指す項目が多いと感じます。

そうではなくて、幸福という着眼点を入れてデータ分析をするのであれば、継続性のある幸福を指す項目を説明変数として使うことによって、より良い分析に繋がると考えています。

ですので、普段、私が企業様から依頼された際には、継続性のあるデータが何かないか相談して、その情報を取り込んで分析しています。

ネットワーク科学からみる幸福

幸福を生み出すネットワーク

ネットワーク科学から見る幸福についても紹介します。

三角形が多い人ほど幸福というものがあります。
三角形とは何かと言いますと、まず自分がいます。友達が仮に二人だとしますね。そうすると、友達と友達が繋がっている時、自分を中心とした関係性の中に三角形ができますよね。

この三角形が多いほど孤独を感じにくい、という風に言われています。

(※大成弘子氏 講演資料より)

例えば、人数によってその最大の三角形の数っていうのは決まるわけですけれども、自分と自分の知人のネットワーク、あるいはビジネス上のネットワークで知人と知人同士でどれだけ繋がっているのかということです。

分かりやすくシンプルに4人の図で説明していますが、例えば芸能人ではどうなっているのか見てみましょう。芸能人、有名人では、ネットワークが自分を中心に放射線状に人がたくさん繋がっています。あまりにも人数が多い場合、知人と知人がつながる可能性が割合的に非常に少なくなってきます。

そうすると孤独を感じやすい。

三角形の少なさというのは孤独を感じやすいわけです。

三角形のネットワークがないと孤独を感じやすい理由

以前、SNS上での三角形の数はリアルな世界とどれくらい違うのか、という分析を論文にしました。

これは非常に面白い結果が出ておりまして、リアルの世界で三角形が作れない人間関係を作ってしまう人は、SNSにおいてもそのような人間関係を作ってしまうことが分かりました。

三角形がなぜ必要かというと、例えば二人で会話をしているときに、あの人って今何をしているんだろう、というような会話にのぼってきやすい。

ここで、じゃあ今度3人飲みに行こうか、ということにもなりますが、三角形がないとその会話は生まれないので、常に一対一の関係しかありません。そのため、ここでは、三角形のネットワークを非常に重要なファクターとして見ています。

幸福は伝播する

幸福というのは伝播します。

この図は1020人の幸福ネットワークで、黄色い色ほど幸福な人を意味しており、青色であるほど不幸な人という風に表しています。これを見てもらうとわかるように、幸福な人は幸福な人同士で固まります。

しかし、不幸は不幸な人同士で固まるのかというと、ほつれた毛糸のように孤立してしまいます。

似た者同士はくっつきやすい、専門的に言うと「ホモフィリィ」という言葉があります。例えば肥満な友達がいるとあなたも肥満になるという話。これは、食事ですね。

目の前にハンバーガーを食べてる友達がいると、自分もうっかりハンバーガーを食べてしまう。身の回りに太るような食生活をしている人がいると、その周りの人達も太るような食生活になってしまうという話です。

幸福についても同じで、幸福な人は似た者同士でくっつきやすい性質があるのですが、不幸だけは何故か孤立することがある、つまりくっつかないことがわかっています。

また、あなたが笑うと周りも笑う。これは、誰かが笑うと、つられて笑ってしまうということがありますよね。これは似たもの同士ではないのですが、幸福が伝播するという話からすると、幸福は輪として広がっていくという性質を持っています。

幸福な人と新しくつながると、幸福になる可能性が9%増える

また、これも面白いデータだと思うのですが、新しくつながったほうが幸福になりやすいことがわかっています。

幸福な人と新しくつながると、自分が幸福になる可能性が9%増えるとデータでは言われています。
不幸な人とつながると、自分が幸福になる可能性が7%減ると言われています。

(※大成弘子氏 講演資料より)

このデータを見るだけであれば、新しくつながった方が嫌な人と会うかもしれないけれども、人生総じて幸福になりやすい、ということになりますね。

今はコロナウイルスの影響で人と新しくつながるのは難しいかもしれませんが、新しくつながっていくことは、人間が幸福に生きるために非常に意味があることです。

第1回 「働く人を幸福にする」データ分析、ピープルアナリティクスとは?
第2回 ピープルアナリストが語る、仕事の生産性を高める幸福とは?
第3回 ピープルアナリストが語る、リモートで組織のつながりを強化する方法
第4回 ネットワークで解決!在宅勤務のコミュニケーションとパフォーマンス課題
◆大成弘子氏がメインファシリテーターを担当
「信頼力をあげて組織のパフォーマンスを最大化する方法」研究交流会



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