チームをしこうさくご 会社/経営をしこうさくご

ピープルアナリストが語る、リモートで組織のつながりを強化する方法

2021年1月7日

この記事では、「働く人々の幸福に関するデータ活用」をテーマにとりあげた、ピープルアナリスト 大成弘子氏の講演を全4回にわたってご紹介しています。今回は前回の記事(ピープルアナリストが語る、仕事の生産性を高める幸福とは?)に続き3回目となります。

第3・4回目では、リモートワークにおいて、企業が陥りがちな以下の問題をとりあげます。

1.リモートワークによってつながりが薄れている、孤独を感じる
2.リモートワークでパフォーマンスが低下する社員がいる
3.リモートワークでオンラインミーティングが増えたが、どうコミュニケーションしたらよいか

今回は『1.リモートワークによってつながりが薄れている、孤独を感じる』についてデータ分析、あるいはネットワークサイエンスの視点からどのようなアプローチが可能なのか紹介していきます。

大成 弘子 氏
ピープルアナリスト

<プロフィール>
「働く人々を幸福にする分析」を自分の生涯のミッションとして掲げる。2013年にSNS上での人間関係はリアルとどう違うのかネットワーク分析の論文をPLoS ONEで発表、翌日にMIT technology Reviewにも取り上げられる。
2014年に広告会社の新規事業部にピープルアナリティクスサービスに従事したことがきっかけでピープルアナリストとしての仕事をスタートする。
2018年より一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会研究員に就任。2019年成城大学データサイエンス教育研究センターアドバイザリー委員に就任。著書として、『データサイエンティスト養成読本~ピープルアナリティクス入門』2018年、『データサイエンティスト養成読本~ソーシャルメディアネットワーク分析』2016年、『プログラマのための論理パズル』(翻訳)2009年、「採用と活躍の技術」WirelessWire News(Web記事連載)2018年

2021年日本能率協会主催「信頼力をあげて組織のパフォーマンスを最大化する方法」研究交流会ではメインファシリテーターをつとめる。

※本記事は大成氏が登壇したJMAマネジメント講演会「リモートワーク時代の、人を活かし、組織を良くするデータ活用の在り方~組織のつながり方と働く人の幸せ~」の講演内容をまとめたものです。

リモートワーク時代の組織のネットワーク


今年多くの組織が4月頃からリモートワークを始めることになりましたが、その中でよく相談を受ける内容のTOP3をご紹介します。

1.リモートワークによってつながりが薄れている、孤独を感じる

2.リモートワークでパフォーマンスが低下する社員がいる

3.リモートワークでオンラインミーティングが増えたが、どうコミュニケーションしたらよいか

このような問題に対して、データ分析、あるいはネットワークサイエンスの視点を活かしてどのような対応が考えられるか、実際に企業さんに提案している内容を一部ご紹介します。

リモートワークは感情的信頼を構築するのが難しい

認知的情報と感情的情報の違い

まずひとつめの「リモートワークによるつながりの薄れ」から見てみましょう。

なぜ薄れを感じるのか。実は、対面でないと感情は伝播しにくい、と言われています。

情報には認知的情報と感情的情報の二つの種類があります。認知的情報は、この人はこんな仕事ができる、この人はこんな能力を持っているという情報です。感情的情報というのは心理的な情報で、嬉しい、楽しいなどといった情報のことです。

例えば同じ職場でイライラしている人が目の前にいたら、なんとなく自分もイライラしてしまいますよね。逆に目の前にいる人がワクワクしていると自分もワクワクするということもあります。これは感情的情報が伝播しているからです。

職場の雰囲気や社風というのは、その場にいる人たちの感情が作り出しています。ひとつの職場において、そこで働く人たちがどのような感情でいるのか、で社風は変わります。

リモートでは感情的情報が伝播しにくい

オンラインのコミュニケーションになると、この人は何が得意かという認知的情報は伝わるのですが、今イライラしている等の感情的情報は伝播しにくいという問題が起きます。

オンラインに限らず、隣のチームや大きい組織でも同様のことが言えます。部署が違う、部署の場所が違うだけで隣の部署がどういう心理状態で働いてるか分からなくなります。

例えば、認知的情報として、あそこのシステム部は今何か炎上案件があって大変そう、ということはわかりますが、実際にそこに行って目の前の働いてる人を見ない限り、大変そうだという情報が入っていたとしても、本当に今の憂鬱そうな状態までは実感値としては伝わりません。

リモートでは感情が伝播しづらくなるため、結局相手が今どういう状態なのか理解できなくなってしまうのです。

心理的安全性とトランザクティブメモリー


また、上司の方が、部下が何を考えているのか急に分からなくなった感じがする、という話をよく耳にします。これは認知的情報ではなくて、部下が今どういう感情なのか分からないということです。

リモートワークでは、感情的信頼を構築することが難しくなります

感情的信頼というのは、好きだから一緒に仕事したいということで、心理的安全性に関わってきます。認知的信頼というのは、あの人は能力が高いから一緒に仕事をしたいということで、トランザクティブメモリーに関わってきます。

心理的安全性とトランザクティブメモリーについても簡単に説明しておきます。

心理的安全性とは、自分の思ったことを発言しても不利益にならない状態のことです。例えば、自分がこんな意見を言ったら怒られるのではないか、という状態は心理的安全性が低い状態です。反対に、自分の思ったことを言って建設的にプロジェクトの議論を進められる状態は、心理的安全性が高い状態です。

認知的信頼に関わるトランザクティブメモリーとは、組織内で誰が何を知っているかという組織の記憶のことを指します。社会心理学者のダニエル・ウェグナーが提唱したもので、誰が何に詳しいのかというメタ情報を記憶しておくだけで、組織は非常に効率的に情報を必要な時に取得できると言われています。

例えば人事に詳しいAさん、経理に詳しいBさんが新規プロジェクトをやっているとします。プロジェクトを推進する中で、システムのことで相談をしたい、法務に相談したい等、プロジェクトメンバー以外の専門性が必要な状態が発生します。その時、組織内であの人に聞けばわかる、ということを組織の記憶として持っておくことで、非常に効率的に仕事ができるようになります。

認知的信頼と感情的信頼のどちらが仕事のパフォーマンスに寄与するのでしょうか。
仕事は能力が必要とされるため、認知的信頼の方がパフォーマンスには必要そうに感じますが、2010年の論文では感情的信頼の方が寄与するという結果も出ています。

感情的情報を補完しながら、認知的信頼を構築する

これらを踏まえて、リモートワークでつながりが薄まったり、孤独を感じることに対しては、感情的情報を補完しながら認知的信頼感を構築するのが良いのではないかと考えられます。

例えば、今、あなたの会社の従業員がコロナ禍をきっかけにリモートワークしていると想定します。その際、働いてる人たちの感情がどういう状態か想像してみてください。悲しんでいるのか、恐れているのか、怒っているのか、楽しんでいるのか、喜んでいるのか。

私は、自分のキャリアがどうなるんだろうとか、目下自分の仕事がどうなるんだろうという恐れの感情が一番多いのではないか、と予想していました。ところが、実際に分析すると、悲しみが一番多くて、次に恐れ、三つ目が怒りの順に感情が渦巻いていると分かりました。自分の想像と違ったので意外でしたが、この時点で既に認識とずれているんです。

さらに感情の推移についても測ってみました。アンケートをもとに感情の推移をグラフ化したのですが、最初のアンケートの時は「恐れ」と書いていますが、後半になると「恐れ」が消え、「悲しみ」、「怒り」については恒常的に存在していることが分かりました。

また、よく見るとコロナの話なのに「好き」や「喜び」といった感情があります。これは何かというと、「在宅になって大変だったけど、人事部やマネージャーが色々支援してくれ助かった、ありがとう」等のエピソードに紐づいています。コロナ禍だからといって、ネガティブな感情のみ存在するのかというと、そうでもないと分かるわけです。

感情的情報はリモートワークなどオンライン上では分かりにくいですが、組織の感情を分析して共有する、つまり、認知的情報として組織に共有することによって、その感情的情報の不足を補完してあげることが人事や経営者にできる一つの解決策ではないでしょうか。

リモートワークが始まって雑談もできないし、上手くコミュニケーションが出来なかったけれども、組織の感情を認知的情報としてデータで共有することで上手く回せるようになりました、というような企業の報告も実際に出てきています。

感情は変化するものなので、最初は怒っていた、恐れていた、などの感情があっても、色々な施策をとることで、安心していくなど、また違う感情が出てくるわけです。その時その時の感情をウォッチしながら施策を変化させれば、つながりが薄れてしまった、孤独を感じる等の問題は解消できると考えています。



-チームをしこうさくご, 会社/経営をしこうさくご
-, , , ,

© 2020 一般社団法人日本能率協会