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アートが導くビジネス・イノベーション(Google他の事例から)

2020年12月22日

近年、新規事業や組織づくり、イノベーション創出といったビジネスの文脈で、アートを活用するユニークな事例が増えています。

ビジネスとアートというと一見、正反対の存在に感じるかもしれません。
しかし、ビジネスアイデアのインスピレーション、組織のミッション、ビジョンの可視化、社会へのメッセージなどにおいてアートは効果的な役割を担うと、世界のアートの中心地ニューヨークで、2019年にアートレンタルサービス「Curina」を創業した朝谷実生氏は言います。

今回は、朝谷氏に、「アート×ビジネス」をテーマに、海外におけるアートのビジネス展開事例や、その導入ステップについて2回にわたり寄稿いただきました。

後半記事:「オフィスにアートを取り入れる7つの効能」

最近のアートxビジネスの事例

「アートxビジネス」と聞いて、「ビジネスにアートが一体どんな関係あるの?」と思う方はきっと多いのではないでしょうか?確かに、アートはビジネスから程遠い存在、むしろ、真逆の関係性にあるように見えます。

しかし、近年、アーティストとコラボレーションするなど、アートを何かしらの形で取り入れることでビジネスイノベーションのきっかけを作ったり、アートの力を借りて自社のPR戦略を上手に図っている企業が国内外で増えてきているのです。そういった事例をご紹介しながら、どのように「アート」をビジネスに活用できるかについてお話しできればと思います。

アートを通じたストーリーテリング、顧客に対する唯一無二のブランディング

事例:パナソニックの京都クリエイティブユニット「GO ON」とのコラボレーション

GO ONとは、京都の伝統工芸を後継する職人によるクリエイティブユニットです。パナソニックはこのGO ONをプロジェクトパートナーとして迎え、パナソニックならではの家電技術を活かしつつ、GO ONと共に新しい“家電の価値”を追求し、「人の五感や記憶に響く家電」を開発しています。

つまり、外部の視点を取り入れることによって、新たな価値創造、そして、プロダクトイノベーションを起こす取り組みです。

例えば、このプロジェクトから生まれた銀釉は、1600年の伝統を誇る朝日焼の「銀彩」の伝統技法と、パナソニックのIH技術を組み合わせています。朝日焼の湯盤の底部に銀を焼き付けて色を出す「銀彩」の技法を施し、銀釉を置くテーブルの裏に設置されたIHによって銀の素材が発熱することにより、お茶を淹れるのに最適な60度の温度でお湯を沸かし、その温度を保つことができます。

パナソニックの工業技術を活用しつつ、日本ならではの芸術性や美意識に立ち返り、まるでアートへと昇華した茶器を生み出しました。

Fashion Headlineより)

結果として、パナソニックとGO ONは、イタリア・ミラノで開催される世界最大級のデザインイベント「ミラノサローネ2017」にて、「ベスト・ストーリーテリング賞」を受賞しています。

パナソニックは機能性、利便性、実用性に高い家電製品の製造メーカーとして有名ですが、GO ONとのコラボレーションにより、アート性が高く、日本の伝統芸術のストーリー性を持ったプロダクトを世の中に送り出し、パナソニックブランドの新たな世界観を生み出すことに成功しました。


Fashion Headlineより)

オフィスへのアート導入による従業員の幸福度・創造性向上

事例:Googleによるオフィスへのアート導入

Facebook、Bloomberg、Deutsche Bank、など様々な企業がアートをオフィスに飾っていますが、特にGoogleは積極的にアートをオフィスに取り入れていることで有名です。

Googleはアメリカの若者が就職したい企業No.1に選ばれ続けていますが、その理由の一つとして、楽しく伸び伸びと仕事ができるようなオフィス環境作りが挙げられます。斬新で自由な発想が生まれ、イノベーションが創出されるようにオフィス環境も意識的にデザインされているのです。

Design Weekより)

従業員の幸福度が高いと生産性や創造性、問題解決能力が高まるというリサーチ結果は既に有名です(*1)。そして、無機質なオフィスで働くよりも、おしゃれにデザインされたオフィスで働く方が従業員がハッピーでいられるというのは明白です。

実際に、観葉植物や写真などで飾られたオフィスで働く従業員の方が、無機質なオフィスで働く従業員よりも生産性が17%も高いというリサーチ結果が発表されています。また、78%の回答者がアートを飾ることによってストレスが軽減された、64%がクリエイティビティや生産性が高まった、67%が士気が高まった、77%が従業員間での対話が促進され、多様性への理解が高まったという回答しています(*2)。

私は、アーティストと、アート作品を欲しいと思っているお客様を繋げ、アート作品のレンタルと販売サービスを提供するCurinaという会社を営んでいますが、お客様の中にはスタートアップ企業が多くいらっしゃいます。

上記のように、従業員が最大限に能力を発揮できるようなオフィス空間を作るという目的でアート作品を探される方もいらっしゃいますが、組織のブランドやビジョンを社内で伝える手段の一つとしてアートを活用されるところもあります。

アートはそれ自体、ストーリーやメッセージがあります。アーティストの信条が明確に表れている作品もあります。企業が選ぶアート作品によって、どういった組織なのかということを示すことができるのです。

企業によっては創業者が選ぶ場合もありますし、マネジメント層のメンバーで何度も議論を重ねてオフィスに飾る作品を選ぶ場合もあります。どういった会社にしていきたいのか、どういった価値観を大事にしたいのか、様々な作品を見る中でどういったことをそれぞれが感じるのか、オフィスに飾る作品としてどういったものが相応しいか、などを話し合い、彼らの価値観や理念を表すような作品を選んだお客様もいらっしゃいます。

そういったプロセスを経て作品を選んだお客様からは、オフィスに飾られた作品を目にする度に、話し合った内容や、組織の価値観を思い出すという声も伺っています。

このようにアートはオフィスの「装飾」としてだけでなく、それが持つ意味合いが組織としての方向性を定義したり、組織としての一体感を生み出したりするきっかけにもなるのです。

Curinaより)

アート/アーティスト支援を通じた社会貢献PR

事例:ユニクロのニューヨーク近代美術館のパートナーシップ

ユニクロと言えば、Tシャツブランド「UT」を通じて、国内外の様々なアーティストとコラボレーションしていることが有名ですが、それだけでなく、2013年からニューヨーク近代美術館(MoMA)と共同プログラム「ユニクロ・フリー・フライデー・ナイト」を開催していることでも有名です。これにより毎週金曜日の夕方は、入館料が無料になり、MoMA所蔵のアートコレクションや展示会を鑑賞することができます。

このプログラムのおかげでユニクロのアメリカでの認知度が上がっただけでなく、アート支援を通じて社会に貢献する組織としてのイメージをユニクロは勝ち取ったのです。そして、この取り組みはベストパートナーシップとしてAmericans For The Arts(全米芸術委員会)により表彰されています。

単にベーシックアイテムを格安で売るリテーラーではなく、アートやカルチャーを積極的に促進する組織として、無数の競合他社からの差別化を図ることができたのです。

MoMAより)

今回は主にアートの活用事例をご紹介しながら、アートの力を借りてどのようにビジネスに対してポジティブなインパクトを与えられるかをお話ししました。

第二回では、アートをどのように取り入れられるか、どこから始めるべきか、最初の一歩の踏み出し方についてお話しする予定です。

(*1)https://hbr.org/2012/01/positive-intelligence

(*2)http://www.umass.edu/fac/spotlight/1.9.html



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