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オフィスにアートを取り入れる7つの効能

近年、新規事業や組織づくり、イノベーション創出といったビジネスの文脈で、アートを活用するユニークな事例が増えています。

ビジネスとアートというと一見、正反対の存在に感じるかもしれません。
しかし、ビジネスアイデアのインスピレーション、組織のミッション、ビジョンの可視化、社会へのメッセージなどにおいてアートは効果的な役割を担うと、世界のアートの中心地ニューヨークで、2019年にアートレンタルサービス「Curina」を創業した朝谷実生氏は言います。

今回は、朝谷氏に、「アート×ビジネス」をテーマに、海外におけるアートのビジネス展開事例や、その導入ステップについて2回にわたり寄稿いただきました。今回は後編です。

(前回記事:アートが導くビジネス・イノベーション(Google他の事例から))

オフィスにアートを導入する意図

第一回ではイノベーション創出を促すためにアートを活用する事例を幾つかご紹介しました。今回は特にオフィスにアートを取り入れるためのステップについてお話しします。

オフィスにアートを導入する際、どういった目的・効果があるのでしょうか?目的がクリアになっていると、どのようにアートを決めるか、どのアートを飾るか、なども同様にクリアになるはずです。以下に考えられる目的を幾つか挙げてみました。

  1. 企業ブランドイメージの確立、企業カルチャーの定義
  2. アーティスト支援を通じたPR /イメージ戦略
  3. クライアントからの信頼感向上
  4. 従業員の満足度向上*
  5. 就活生からの人気度・人材採用力の向上
  6. 企業アートコレクションの構築、資産価値の向上
  7. 経営者の教養・権力・地位の表現

以下では、#1~5のそれぞれにおけるアートの選び方についてお話しします。

*従業員の満足度向上が従業員の能率、独創性、等を促進することについては第一回を参照ください

①企業ブランドイメージの確立、企業カルチャーの定義

自社のブランディングに合うようなアートを選ぶことで社内・社外でブランドイメージを浸透させ、ブランド価値向上を図ることができます。

例えば、サンフランシスコ発のスニーカーブランドAllbirds(オールバーズ)は、エコな素材や製造工程で知られており、サステイナビリティをマーケティングでも前面に押し出しています。そして、サステイナビリティを促進するミッションは従業員にも共有されており、オフィスデザインにも反映されています。

AllbirdsのSFオフィス(link

 

BuzzFeedはニュースやエンタメ情報を伝えるオンラインメディアですが、友人同士でシェアされ、拡散し、「バズる」ようなコンテンツ配信に重点を置いています。

BuzzFeedの「流行」、「ポップカルチャー」、「個性的」などのコンセプトがオフィスに飾られているポップで明るい色合いのコンテンポラリーな作品からも見受けられます。

BuzzFeedのオフィス(link

このように組織ブランドや組織風土を反映したオフィス環境を作る際、アート選びの意思決定プロセスに従業員を巻き込むと、組織として築き上げたいブランド価値や風土について彼らにも考えてもらうきっかけを作ることできます

アート選びをサポートするサービスとしてはArtScouter(アートスカウター)が挙げられます。ArtScouterとは、トップギャラリーが厳選したアート作品の中から、AIを活用して空間に最適なアートを選出するプラットフォームです。従業員や役員メンバーとのワークショップの計画・実行もサポートしており、NTTドコモの開発協力によりアートアンドリーズン株式会社がサービス提供しています。

②アーティスト支援を通じたPR /イメージ戦略

アーティスト支援を目的とする場合は、アート作品を選ぶ際に若手アーティストにするのか、女性アーティストにするのか、LGBTQアーティスト、ローカルのアーティストにするのか等、どのようなバックグラウンドのアーティストの作品を選ぶのかを検討すべきです。

例えば、IBMは6ヶ月毎にニューヨークのオフィスにニューヨーク出身のアーティストを招待し、アート作品を描くためのスペースをオフィスの一角に設けています。(*1)

IBMのオフィス

*1 参照記事:https://www.buzzfeed.com/behr/the-best-meme-mashup-youll-see-on-the-internet-today

Googleはホルネル症候群発症により家を失い、ホームレスとなったアーティスト、スコット・ベナーの作品をGoogleのケンブリッジのオフィスで披露しました(*2)。

アートを通じて、従業員にエネルギーやインスピレーションを与えることを意図しています。更には、結果として、マイノリティを積極的に支援し、ダイバーシティやインクルージョンを推進する企業として、社員や社会に対して宣伝することができました。

*2 参照記事:https://www.artsy.net/article/artsy-editorial-how-millennials-are-changing-corporate-art-collections

③クライアントからの信頼感向上

オフィスに来客がある場合、受付や会議室、廊下等、から企業に対する訪問者の印象は形成されていきます。特に、受付で第一印象が決まるため、受付にどのようなアート作品を飾るかは重要だと言えます。

例えば、弁護士事務所であれば、信頼感や威厳を醸し出すような重厚なアートの方が適切かもしれませんし、最先端のIT技術を活用するIT系スタートアップであれば、注目の若手アーティストの最新作が良いかもしれません。

ニューヨークのビルには、ほぼ必ずと言っていいほど、受付には目玉とも言えるアート作品が飾られていることが多く、飾られている作品のおかげで建物や企業が有名になることもあります。

44 Wall Street

535Madison

④従業員の満足度向上/⑤就活生からの人気度・人材採用力の向上

ここでは#4と#5を合わせてお話しします。

単純に人は無機質で殺伐としたオフィスより、素敵なオフィスを好むものです。そして、第一回でお話ししたように従業員の満足度が高いと効率性や独創性、問題解決能力などが高まり、パフォーマンスが向上するという調査結果で溢れています。

また、就職活動で企業を探す際、事業内容や業績、職場の雰囲気、福利厚生に加えて、オフィスがおしゃれかどうかも検討ポイントになりえます。競合他社と比較した時に、採用条件がほぼ同じなのであれば、おしゃれなオフィスがある方に惹かれて応募する人もいるでしょう。

更に、オフィスが綺麗だということは、従業員が働く労働環境に会社が投資してくれていると従業員が受け取ることも可能です。

デザイン性の高いオフィスを実現する際、もちろん自社で実行することもできますが、オフィスの規模やスコープ等によってはインテリアデザイナーやオフィスデザイン会社、ArtScouterのようなアートのコンサルティングサービスを活用することをおすすめします。

アートとは?

そもそもアートとは一体何でしょう?

アートとは「あくまでも美術館に保管・展示されているもの」といった定義もあれば、「誰かが決めるものでもなく、誰かが『アートだ』と思うのであれば、なんでもアートになり得るし、誰でもアーティストになれる」等、聞く人によってアートの定義は多様です。

私の主観的な意見としては、アートとは「鑑賞者に究極的な問いを突きつけ、新しい視座を提案するもの」だと思っています。だからこそ、素晴らしいアート作品は、見る人によって解釈の仕方や着眼点が三者三様で、そこから鑑賞者の間での議論になり、対話が生まれるのだと思います。

この連載では、イノベーション促進にアートを活用する事例を幾つかお話ししましたが、中でもオフィスにアートを飾るのは一番手っ取り早く、簡単に、お手頃です。購入だけでなく、レンタルなどアートの導入の仕方は様々ですので、是非アートをオフィスに取り入れていただければと思います。

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