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DXのための人材育成とは?<DXの基礎知識③>

2021年2月17日

今回はDX(デジタル・トランスフォーメーション)の基礎知識や進め方について、イチから学びたい方のために、日本能率協会の「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」で講師をつとめる高安篤史氏にコラムを寄稿いただきました。

このDXのコラム連載は、下記の様な流れで全9回にわたって進めていきます。

  • データの有効利用とは?
  • DXのための組織改革とは?
  • DXのための人材育成とは?・・・・・今回はココ
  • DXに関連する技術とは?
  • DX推進のための必要スキルとは?
  • DX推進におけるはまりやすい罠とは?
  • DX推進のためのコラボレーションとは?
  • DX推進のための業務改革とは?
  • DX推進のためのITシステムの最適化とは?

著者プロフィール

高安 篤史 氏
合同会社コンサランス 代表 / 中小企業診断士  

早稲田大学理工学部工業経営学科(プラントエンジニアリング、生産管理専攻) 卒業後、大手電機メーカーで20年以上に渡って組込みソフトウェア開発に携わり、プロジェクトマネージャ/ファームウェア開発部長を歴任。 IoTのビジネスモデル 構築に関するコンサルタントとしての実績 及び自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。
・情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、応用情報技術者、セキュリティマネジメント)
・IoT検定制度委員会メンバー(委員会主査)
・2019年4月に書籍『知識ゼロからのIoT入門』が幻冬舎から発売
・2020年に共同執筆した「工場・製造プロセスへのIoT・AI導入と活用の仕方」が発売

日本能率協会主催「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」では講師をつとめ、参加者が自社のDX推進レベルの理解と改善方法の検討ができるプログラムを提供している。

DXのための人材育成とは?

以前に、DXの本質は、データの有効利用であり、そのための組織改革の考え方をお話しました。今回は人材育成の話になります。

DXのための人材育成については、どのように考えれば良いのでしょうか?

従来の組織においては、各部門の役割から、その部門の専門性を追求することが重要でした。DX時代は、従来の専門性に加え、データエンジニアとしてのデータ分析(含むAI)に関するスキル、また全体最適を実現する幅広い知見が重要になります。従来の専門性に加え、データエンジニアとしてのデータ分析(含むAI)に関するスキルを合わせて、「ダブルメジャー」と表現しています。このデータ分析(含むAI)に関するスキルにおいて重要なのは、「プログラミング技術」より「データ活用技術」になります。

また、全体最適を実現する幅広い知見については、予め、スキルマップ(スキル標準)などを組織として作成し、役割などにより、どこまでのスキル項目を習得しないといけないのかを計画することが重要になります。闇雲にIoT/AIなどの項目を学習しても効率が悪く、無駄になります。特にエンジニアの人は、技術にのめりこみ、データの有効利用の本質を忘れがちです。

 

DXにおける人材育成を3つの観点で解説

米国にDX推進 及び DX人材育成に後れをとった要因は多数ありますが、下記の3つのポイントで説明したいと思います。

(1)学校教育観点

学校教育観点ですが、米国では全てのポイントで“実践”を重要視します。知識の詰め込み的な教育はありませんし、大学の教授も企業などのコンサルタント/企業顧問/企業との共同開発などの実践が義務付けられています。日本においても、下記の「AI戦略」にもあるようにデジタル人材の育成に本腰を入れようとしています。

「AI戦略」

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/pdf/aisenryaku2019.pdf

具体的には、

・小学校でのプログラミング必須化

・中学/高校での「情報処理科目」の強化と必須化

・高校でのAI(人工知能)につながる数学(ベクトル、行列、複素数など)の見直し

・共通テストへの「情報処理科目」の必須化の検討

・大学では、文系/理系の区分を無くした上でのデータ分析技術の習得

などです。

しかしながら、下記の課題が大きく、英語教育の様に(大学まで英語を学習しても実践的に英会話でのコミュニケーションがとれるようにならない)、現状のままでは情報処理科目のテストで点数がとれるようにしかならず、業務で使えるようにはならないでしょう。

(DX人材を育成するための学校教育の課題)

・デジタル技術を教える側のスキルの問題

・現状は知識重視であり、業務の解決を実践的に実施する内容になっていない

・デジタル技術の必要性が理解されていない(本当に必要であれば使えるようになる。英語も3か月程度でも生活に必要であればコミュニケーションが可能になる)

(2)企業/ビジネス観点

企業においては、「自社の長期的な成長の観点から必要なスキルが設定できていない」、さらに言うと「企業のトップがデジタルスキルを理解できていない」こともあります。米国では、どの業界の社長もDXを語れないようなトップはいません。ICTが分からなければ、社長にはなれませんし、トップを目指すのであれば30年前からデジタルスキルを必須として学んでいます。

日本では、長年、デジタルやITに関しては、ITベンダーに任せれば良いという風潮で企業のコア技術とは考えてきませんでした。その遅れは、海外(欧米や中国)に20年以上の差がついていると言ってもよいでしょう。今からでも遅くは無いですので、必要なスキル標準を設定し、そのスキルを習得するための実践的(役に立つための)育成方法を計画しなければいけません。

私は、コンサルタントして企業を支援する場合は、スキル標準の設定 及び 育成計画を支援することを必須としています。また、私が企業に提供する研修では、考えさせる演習を中心にします。知識は、Web(インターネット)で情報が溢れている状況の中では、大半は担当者が自分で習得できます。

(3)個人の考え方の観点

米国では、自分のキャリアアップのために、所属企業とは切り離して(企業には頼らず)スキルアップを目指します。転職でのキャリアアップが前提にある習慣の違いも大きいです。例えば、米国のエンジニアは通常残業をしません。理由は、残業をすることは能力が無いと思われる慣習があるためです。ただし、これらのエンジニアは定時で帰宅しても、自ら必要なスキルを考え、自主的に勉強していますし、社会人向けの大学に通うことも珍しくありません。一方、日本では2018年からの働き方改革で、生産性向上を目指しました。

しかしながら、従来と比べ残業は減ったものの、個人のスキルは低下していると言わざるを得ません。残業を減らすことだけが目的になってしまっており、生産性の向上もできていないばかりか、日本の強い現場が失われ、人と人との結びつきが少なくなり、技術伝承ができていないことも問題です。背景には、日本の甘い終身雇用制度的な考え方や競争を意識させず仲良し風土の学校教育もあると思っています。

 


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