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データの有効利用とは?〈DXの基礎知識①〉

2020年12月17日

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになってきましたが、一体何を指しているのか、通常のデータ活用やデジタル化とどう違うのか、基本的なことを聞きたいけど誰に聞いていいのか分からない、という方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は日本能率協会の「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」で講師をつとめる高安篤史氏にDXの基本的な知識から、実際に推進する際の注意点まで、コラムを寄稿していただきました。

このDXのコラム連載は、下記の様な流れで全9回にわたって進めていきます。

  • データの有効利用とは? ・・・・・今回はココ
  • DXのための組織改革とは?
  • DXのための人材育成とは?
  • DXに関連する技術とは?
  • DX推進のための必要スキルとは?
  • DX推進におけるはまりやすい罠とは?
  • DX推進のためのコラボレーションとは?
  • DX推進のための業務改革とは?
  • DX推進のためのITシステムの最適化とは?

著者プロフィール

高安 篤史 氏
合同会社コンサランス 代表 / 中小企業診断士  

早稲田大学理工学部工業経営学科(プラントエンジニアリング、生産管理専攻) 卒業後、大手電機メーカーで20年以上に渡って組込みソフトウェア開発に携わり、プロジェクトマネージャ/ファームウェア開発部長を歴任。 IoTのビジネスモデル 構築に関するコンサルタントとしての実績 及び自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。
・情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、応用情報技術者、セキュリティマネジメント)
・IoT検定制度委員会メンバー(委員会主査)
・2019年4月に書籍『知識ゼロからのIoT入門』が幻冬舎から発売
・2020年に共同執筆した「工場・製造プロセスへのIoT・AI導入と活用の仕方」が発売

日本能率協会主催「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」では講師をつとめ、参加者が自社のDX推進レベルの理解と改善方法の検討ができるプログラムを提供している。

データの有効利用とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)と似たような用語に、デジタイゼーション(Digitization)/デジタライゼーション(Digitalization)というものがあります。それぞれの意味を説明すると以下のようになります。

(1)デジタイゼーション(Digitization):データ収集⇒蓄積

・デジタル化(アナログをデジタルへ)

・アナログなものをデジタル信号に置き換える、つまりコンピュータが処理できる0/1の世界に置き換える

・レコード ⇒ CD

・アナログカメラ ⇒ デジタルカメラ

・紙データ ⇒ 写真

・手書き ⇒ ワープロ

(2)デジタライゼーション(Digitalization):⇒分析⇒改善

・データ活用による業務(プロセス)全般のデジタル化

・製造業の生産管理システムによる効率化

・RPA(Robotic Process Automation)による間接部門の業務の自動化

(3)デジタルトランスフォーメーション(DX):⇒価値創造⇒変革

このデジタルトランスフォーメーション(DX)は、経済産業省によると「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

上記の(1)(2)(3)の違いを意識することも必要ですが、まず、私がいろいろな組織を見て感じるのは、新規のデータにこだわりすぎだということです。新たなことをやるからという発想で、何のデータを収集しようかという議論になっている企業が多数存在するという意味です。

まずは、既存データの活用が第1ステップですし、既存データの有効活用ができていない組織は、新たにデータを収集しても有効活用できないでしょう。各部門が所有しているデータが、他の部門で活用できる可能性や、各部門間のデータが融合され、新たな価値を生み出されることを理解することも重要です。

では、データの有効利用の例をいくつか説明しましょう。

データの有効利用の事例

(1)データの有効活用例

①病院の健康情報/診察履歴/服用薬/病歴のデータ:

受診する病院が変わると今までの病歴を全て話さないといけない(詳細を記憶で伝えるのは困難)。健康診断のたびに問診票に記載を実施する。過去の病歴が分かると、病気の再発を含めての疑いが検討できる。健康データの有無で緊急時の対応も変わり、人命に関する効果も大きい。

②健康保険証、運転免許証、資格情報、銀行口座番号などを全てマイナンバーカードへ紐づけ:

各種手続きの簡素化、給付金の処理の簡素化など。

(2)個別(部門)のデータが共有できれば全体最適できる例

①プロジェクトの担当者の日報、パソコン使用状況、ファイル更新頻度

⇒ 上記のデータからプロジェクトの状況/問題発生の兆候の見える化が可能になる。

②システム開発プロジェクトにおける報告

どの工程にどれくらい時間をかけているのか分かれば、現状把握や改善につながる。報告(日報を書くこと)が目的になっているプロジェクトが多数存在している。何のためにデータを使うのが明確になれば、記載する工程などの分類項目は自ずと決まる。

③HP(ホームページ)のアクセス解析 

⇒ ユーザの興味が判定可能であり、そこからマーケティングや新製品開発に活かせる。現実には、単なるHP(ホームページ)のアクセス数を上げることが目的になっている。

(3)AI(人工知能)化の事例

①収集した健康データから病気の要因分析を行う

②会議の録音データからの会議録の自動作成(過去の会議録を学習データとする)

③自動車の運転情報からの事故予測/自動車保険の価格設定

④製造業の外観検査のAI化

⑤化学プラントや発電所でのセンサーデータからの異常の早期検知

データの有効利用については、幅広く捉えることが必要です。例えば、現在多くのセミナー(研修)がリモート(オンライン)に切り替わってきています。

この御時世(ごじせい)では止むを得ないということもありますが、講師も含め、大抵の反応は、講師と受講者での意思疎通がしづらいというものです。

このリモート(オンライン)セミナーですが、対面式(リアル)セミナーに比べ、大きなメリットがあります。それは、例えばチャット機能を使うことで、受講者全員の意見を一度に確認することができます。受講者の意見もデータ(情報)です。対面式(リアル)セミナーでは、時間の関係で数人の意見を聞くだけことが限度だったものが、全員の意見が一度に共有し、デジタル化され蓄積できることで相乗効果(多くの経験者の意見を共有することでの気づきなど)が生まれます。

従来の枠を超え、産業全体/社会全体を俯瞰していくマインドが必要

また、個別の部門、製品、業界で捉えてしまうと、データの有効利用も限界があります。従来の枠を超え、産業全体/社会全体を俯瞰していくことが重要になります。

ここで、「今の組織の中の自分の役割としては、そんな社会全体まで考える必要は無い」と思われる方も多いでしょう。そこは、敢えてDX時代では間違いであることが多いと申しておきます。IoTにてあらゆるモノや組織がつながり、従来は、言われたことだけをやっていた(作っていた)部門や担当者も、つながることにより得られたデータを分析することで、顧客やユーザや社会において何が課題であるかが分かるようになります。

さらに言うと、その課題は、誰も気づいていない、皆さんの立場だからこそ、価値が創出できることもあります。これが、DX時代の究極の「データの有効利用」「価値の創出」です。



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