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DX推進のための業務改革とは?<DXの基礎知識⑧>

 

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の基礎知識や進め方について、イチから学びたい方のために、日本能率協会の「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」で講師をつとめる高安篤史氏にコラムを寄稿いただきました。

このDXのコラム連載は、下記の様な流れで全9回にわたって進めていきます。

著者プロフィール

高安 篤史 氏
合同会社コンサランス 代表 / 中小企業診断士  

早稲田大学理工学部工業経営学科(プラントエンジニアリング、生産管理専攻) 卒業後、大手電機メーカーで20年以上に渡って組込みソフトウェア開発に携わり、プロジェクトマネージャ/ファームウェア開発部長を歴任。 IoTのビジネスモデル 構築に関するコンサルタントとしての実績 及び自身の経験から「真に現場で活躍できる人材」の育成に大きなこだわりを持ち、その実践的な手法は各方面より高い評価を得ている。
・情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、応用情報技術者、セキュリティマネジメント)
・IoT検定制度委員会メンバー(委員会主査)
・2019年4月に書籍『知識ゼロからのIoT入門』が幻冬舎から発売
・2020年に共同執筆した「工場・製造プロセスへのIoT・AI導入と活用の仕方」が発売

日本能率協会主催「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進セミナー(オンライン)」では講師をつとめ、参加者が自社のDX推進レベルの理解と改善方法の検討ができるプログラムを提供している。

 

DXにおける業務改革と標準化の重要性

業務改革で重要なことは何でしょうか?私は、従来の業務のやり方を否定することから出発することが良いと話しをしています。DXによって、いろいろなものが変わることが必要との前提で考えていても、いざ今まで慣れ親しんだ業務のやり方を他人から否定されることは、やはり耐えられない部分があると思います。この問題を解決するため、全ての担当者は従来の業務のやり方を自ら否定してみてください。

日本においては、業務の進め方が独自の方法になっており、ここに価値があると誤解している企業や担当者が多数おります。この独自な方法に固執することで、価値どころか長期的にみると大きな負の財産になっていることを理解する必要があります。なぜ、独自の方法が負の遺産になってしまったかをこのあと確認していきます。

まず、業務改革のためには“標準化の重要性”について説明しなければなりません。「“標準化の重要性”なんてわかっているよ!」との言葉が返ってきそうですが、日本はこの標準化が遅れていることで、未曽有の危機を迎えていると言わざるを得ません。

まず、“標準化は従来から重要であったことは言うまでもないですが、IoT(Internet of Things)による繋がる世界では、ネットワークの標準化、データの互換性がさらに重要になりました。ドイツでは、この標準化を第一優先に考え、中小の製造業も含め、国全体をひとつの工場とする取り組み”インダストリー4.0“が推進されています。通常、欧米の戦略は、自社において価値があり競争力につながる業務はほんの一握りという認識であり、ほぼ全ての業務は標準化へ進むことになります。

一方、日本では、国全体のDXの推進において、標準化は二の次とされているような傾向があります。思惑が異なる企業同士が業界団体の中で標準化を前提にしてしまうと、業界団体自体の存続ができない状況に落ち込むことも予想されるのが大きな理由です。

では、なぜ、この標準化が日本では遅れており、DXのボトルネックになっているのでしょうか?それは、下記の①と②の2つが主な理由です。

①日本社会の背景と独自の教育

そもそも日本は、同じような価値観を持ち、非常に柔軟性が高く、知識レベルも高度な人材が同じ企業に継続的に勤めるという背景があり、標準化を前提にしなくても、すりあわせながら業務を進めることができました。私が、電気メーカーに就職し、制御ソフトウェアの開発部門に配属された際に、その当時の課長から言われたことは、「先輩のスキルを盗め」という指導でした。今でも、「マニュアル型人間になるな!」「先輩の背中を見て育つことは考える人材が育つ」ということを言う人に出会うこともあります。

「日本においてもマニュアルはしっかり存在する」と言われる方も多いかもしれませんが、海外ではいろいろなバックグラウンドをもった多様な人が同じ業務をやる上では、誤解が無い標準的な仕事のやり方をマニュアルで纏めています。アジアでも日本以外の国では、このマニュアルや標準化が重要視されております。一方、諸外国の製造業の担当者からは、日本の業務マニュアルを見ても全く意味がわからないという意見が多数でてきます。もう一つの背景には、日本語の文書の曖昧さと日本では「行間を読め」などという教育がされていることにあります。

②日本国内市場における業界の割合

②また、日本では国内の市場が大きく、国内のどの業界もほぼ3つ以上の企業がライバル関係になっており、1つの企業の方式に合わすと他の2つの企業が反対することで標準化が進まないという実態になっています。前述のドイツでは、国内の市場は日本に比べ小さく、市場はヨーロッパ全体であり、国内では各業界で主要な企業が1つ突出しています。これらの企業が政府主導のもと、標準化を第一優先で考えることはDXにおいて合理的な推進方法です。

この日本の標準化の遅れにより、下記の致命的な問題が発生しています。

設備やシステムをつなげようと思っても、互換性が無く接続できない

・企業が連携(含む企業合併)して対応しようと思っても業務の進め方が異なり、効率が悪くなる

・同じ企業の中でも、事業部/工場/部門が異なると業務のやり方が異なる

・データを利用しようと思っても、フォーマットが異なり活用することができない

・標準化が前提では無いため、属人化やノウハウが暗黙知化され、技術伝承が進まない

・新規に担当者が配属(含む中途採用)されても、特殊な業務が多く、短期間では立ち上がらない

・新入社員も学生時代に学習したことが生かせず、就職後改めて企業の教育を受ける

・学校教育が即戦力につながらないため、学校では実践的な学習では無く、知識習得/試験で点数をとること、無難に卒業することが重要視される

・ITシステムの負の資産により、新規のIT投資が進まない(詳細は、次回のコラムでお話します)

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