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失敗事例に学ぶ、DXを成功に導くプロジェクト推進戦略とは?(3/3)

2020年12月9日

本記事は、計400社以上のDXやデジタル推進のご支援をされている株式会社スタンダード 代表取締役CTO・共同創業者 鶴岡友也氏によるセミナーを、全3回の連載でご紹介しています。

同社がこれまで獲得してきたノウハウを基にしたDXプロジェクトの進め方のベストプラクティスを体系的に知ることができる内容となっています。

前回の記事では、DX推進プロジェクトのステップについて説明しました。
そのうえで組織にはDX推進に応じたレベル1~3の3つのフェーズがあり、それぞれでやることが決まっていると紹介しました。
最終回となる今回は、DXプロジェクトの推進段階に応じて、組織、特に経営者・DX推進担当者に具体的にどのようなアクションが求められるかを紹介していきます。

株式会社スタンダード
代表取締役CTO・共同創業者 鶴岡友也 氏

【プロフィール】(取材当時)
大学ではコンピュータサイエンスを専攻。在籍中から、AIエンジニアのフリーランスとして複数の開発案件に携わる。複数の立ち上げ初期スタートアップで事業開発に従事し、0→1の立ち上げ経験を積む。東大人工知能開発団体HAIT Labの運営を通じながら、株式会社STANDARDの共同創業に至る。

※本記事はJMA GARAGEでの鶴岡氏の講演「【失敗事例から学ぶ】DXを成功に導くプロジェクト推進戦略とは?~ロードマップの引き方とPoCマネジメントの方法~」をもとに作成しました。

経営者がリーダーシップを持って進めなければDXは上手くいかない

最初は経営者がすべきことからです。

経営者自身がDXの必要性を、正しく理解する

個別最適で実施するレベル1のフェーズからやるべきことを見ていきましょう。レベル1では、まず初めに経営者自身がDXの必要性を、正しく理解することが大切です。

既にお伝えした部分と重なりますが、DXを取り組むべき要因の一つとして、外部環境の変化があります。外的要因が変化してる中で、顧客の課題を継続的に捉え、変化をし続ける必要性があるので、そのための効果的な手段としてDXが必要だとお話ししました。またリスクの話もさせて頂きました。

他社に負けてしまったり、高コスト企業になってしまうリスクもあるので、一般論ではありますが、実際にどのようなリスクが存在して、何をする必要性があるのかを経営者自身が正しく理解することが、第一歩目になります。

またよくある今までのプロジェクトの進め方として、計画立案に時間を使って、しっかりと精緻な計画を作り、その通りに実行して行くケースが多いと思います。

その方法はこれまでの不確実性の低い時代では問題がなかったのですが、現在のように社会の変化速度が加速している中では、実行しながら学びを得て少しずつ軌道修正して行きながらゴールへ向かって走っていく、いわゆるアジャイル的な方法が必要になってきました。

このアジャイルというのは、不確実性が大きいものを素早く、効率よくコントロールするという概念です。この概念を取り入れながらプロジェクトを進めていくためにはどうすればいいのかは、次の3つのアクションに落としこむことができます。

・顧客への付加価値を追求すること
・スピード感をもった仮説検証をすること
・チームでの学習を重視すること

の3つです。

経営者主導でアジャイルが実践できる組織マインドに変えていく

このアクションを取れるように、組織全体や経営者自身を変えていくのが、レベル1のフェーズで経営者がすべきことの二つ目になります。

レベル2のフェーズでは、DX は一部の部門の話ではなく、全社で協力しながら取り組むようにしていく必要があります。

そのためには、経営者がリーダーシップを持って推進していかなくてはいけません。その際に、トップダウンでDXに取り組む必要性があると伝えること、中長期のビジョンを伝えることの二つが欠かせません。

よくある失敗パターンの一つとして、経営者がDXを「どうにかやっておいて」と言って、本気で取り組まないことがあります。しかし、全社的な取り組みにするには経営陣のリーダーシップが必要不可欠です。

だからこそ、本気でトップダウンで必要性を伝えて、そして本気で取り組んでいくんだというメッセージを伝えていくことが大切になります。

別の一つの失敗パターンとして、目的や理想像が明確でない状態でプロジェクトを走らせてしまうパターンがあります。会社全体として、今後どのようなお客様にどのような価値を提供していくのかというビジョンを示し、目指すべき目標を明確にしないと、社員はどこに向かって努力していけばよいのか分からないので、ビジョンを伝えることも経営者の役目になります。

DX推進を担うチームの作り方

また、この段階では、具体的にDX推進の組織を作ることも並行して行う必要があります。

組織体制のパターンは大きく4つあって、経営直下の統括組織か、事業特化型組織か、事業部の独立組織か、社外組織がその4つですが、特におすすめでメジャーなパターンとして経営直下の統括組織があります。経営とDX推進で、全社的なDXを進めていく形です。

これは社内の複数の部門において、DXを推進する際に有効なパターンです。この体制であれば経営も含めてリードできるので、DXを取り組む中で起きてしまう事業部門とのコミュニケーションロスなどの摩擦も解消でき、より強く、より速くプロジェクト推進できるようになってきます。

中長期のROIで投資判断をする

レベル3のフェーズでは、本格的にDX戦略・立案を行い、短期でどのような成果を出していくのかを考えていくことが必要です。

改めてにはなりますが、DXの目的はお客様に付加価値を与えることなので、そこから業務効率化と提供価値の向上というステップに分解して、自社の経営課題とは何なのか、その解決手段としてDXの戦略が立ってくるようなイメージになります。

レベル3にすべきことの、二つ目は中長期のROIで投資判断をすることです。DXの取り組みは、組織の変化を伴って行くため、短期で成果は出しにくいです。

多産多死スタイルでやっていくためには、個々のスキルや能力、環境、マインドセットという組織や文化へ投資していくような視点が重要になってきます。そのため短期で見ずに、中長期の目線で見ることが重要になります。

と言って全て中長期の投資ということで正当化されるわけではないので、付加価値を与えるという目的からぶれずに、プロジェクトを推進するという条件付きになります。この本質を間違って理解しないように気を付ける必要があります。

担当者には必要な能力が3つある

次にDX推進の担当者がすべきについて説明していきます。DX推進の組織ができるのはレベル2からになりますので、すべきこともこのフェーズから発生します。

主要メンバーの育成

まずは主要メンバーの育成をしていくことです。複数のプロジェクトで成果を出すためには、主要メンバーには大きく分けて以下の三つのスキルが必要です。

一つ目は、解決すべき課題を見つける能力
二つ目は、シンプルな解決策を構築する能力
三つ目は、運用に乗せ、ビジネス適応させる能力

これらをすべて兼ね備えている人材は社内には少ないため、チームでこれらの能力を補完しあって、プロジェクトを進めていくことが求められます。

プロジェクトの中には、以下の通り大きく三つの役割の人材が要ります。

・プロジェクトの全体を管理するマネージャーという役割
・技術にかかわらず解決策を作って運用に乗せていくエンジニアという役割
・現場の課題を見つけて、きちんと運用に乗せていくメンバーという役割

それぞれの役割によって、必要な三つの能力のポイントが違います。マネージャーは、薄く広く。メンバーは課題発見と運用に乗せること。エンジニアは解決策を作ることと、運用まで一緒に責任を持つことです。

この役割分担の認識が組織内で統一されていることが重要です。この認識が持てないままだと、仕事の押し付け合いが始まりプロジェクトが進まなくなってしまいます。

現場のプロジェクト推進のサポート

またレベルの2でやるべきことの二つ目は、現場のプロジェクト推進のサポートです。

各事業部門ではやりきれない部分も、DX推進部がサポートして実行することがあります。そのため、先ほどの三つのスキルに対して、現場の足りてない部分を、それぞれ実行していくことが、レベル2のフェーズでDX推進に必要な役割になってきます。

例えば、ワークショップのファシリテーションをしたり、要件定義を一緒に行ったりしていくことが、各事業部門をサポートしていくためのアクションになっています。

初期の成功事例をスピーディーに作る

またレベル2の最後の役割は、初期の成功事例をスピーディーに作ることです。レベル2のフェーズを進めていくためのキーポイントは、社内からの信頼を得られる成功事例です。

初期の成功事例がなぜ必要かと言うと、1つ目は社内の協力がもらいやすくなるからです。全社的に注目されやすくて、当初は不安の目で見られることが多いと思うのですが、成功事例を生み出すことで社内から信頼を得ていくことができます。2つ目は、全社的に成功のイメージがつかめることです。社内には、「どうすれば成功するの?」という目を向ける方もいらっしゃるので、成功事例を作ってイメージを持ってもらうことが大切です。

それを作るために、初期段階において、説明しやすさと成果の出しやすさと理解しやすさの3つの軸でプロジェクトを選ぶこともポイントです。

DX戦略の立案部門間の連携

レベル3でやるべきことは、DX戦略の立案部門間の連携です。

特に経営と一緒にDX戦略の立案をして、実行していく戦略立案プロジェクト企画のようなことをやっていくことが一つ目のやるべきことです。

またそれを行いながら、ノウハウを社内で共有していくことが求められます。プロジェクトの進め方やみんなが失敗しているポイントを、全社的に共有して、各部門でもしっかりと実行できるような状態を作っていくことが、役割の一つになります。

またノウハウとセットで、社内での成功事例、失敗事例を両方を共有していくことが、社内の財産になってくるため、中立的な立場としてDX推進のメンバーが積極的に行っていきましょう。

全社的なDX推進人材の育成のプランをつくる

三つ目は、人事部と一緒に全社的な人材育成のプランを作っていくことです。

効率的にDXプロジェクトを進めていくためには、社内でDX人材を育成していくことが必要不可欠なため、会社の戦略に合わせて、それを実行するためにはどのレベルの人材が何名必要なのかを決めていく必要があります。

またその際に定義が分かりやすいように、基準となるようなスキルマップを作ったりもやるべきことの一つです。

誰が何を行うのか、の共通認識作りが重要

ここまで、DXのロードマップをステップアップさせていくために、各部門がどう分担したらよいのかをお伝えしてきました。

我々が400社以上を見てきた中での成功のポイントをまとめると、どう役割分担をするのか、つまり何のアクションを誰がやるのかを、社内の共通認識にすることが、効率的にDXを進めていく上で、非常に重要と捉えています。
ぜひお話ししてきたことを各社の付加価値向上に貢献するDXの実現に役立てていただけると幸いです。






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