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三人のレンガ職人の寓話~今、改めて仕事の意義を考える~

【経営の羅針盤 2020年10月】

■3人のレンガ職人の寓話

このコラムをご覧になっている方なら、「3人のレンガ職人」の寓話を目にしたことがある方が多いことかと思います。念のために、概略をご紹介します。

ある旅人が道を歩いていると、一人のレンガ職人がレンガを積んでいるところに出会った。
旅人が「あなたは、何をしているのですか?」と尋ねると、
レンガ職人は、「見ればわかるだろう。親方の指示で、レンガを積んでいるのだ」と答えた。

旅人が歩いていくと、別のレンガ職人に出会った。
また、「何をしているのですか?」と尋ねると、
二人目のレンガ職人は、「レンガで壁を作っているのさ。家族を養うために」と答えた。

旅人がさらに歩いていくと、また別のレンガ職人に出会った。
また、「何をしているのですか?」と尋ねると、
三人目のレンガ職人は、「皆が集まる教会を作っているのさ」と、目を輝かせながら答えた。

この寓話は、社員が目的をもって仕事をすることで、モチベーションが高まり、良い仕事ができるという例えとして用いられます。

■経営やマネジメントの立場の方々にとっての示唆

経営者やマネジメントの立場にある方々にとっては、社員が三人目のレンガ職人のように、目を輝かせて、意欲的に働くことのできる職場を実現するために、自社の経営理念や目的をしっかりと示すことが重要であることを示唆するでしょう。

しかも、自社の理念や目的を「スローガン」として掲げることに留まらずに、社員一人ひとりに共感され、自分事として受け止めてもらうことが不可欠です。

本欄2019年2月14日掲載のコラム「あらためて、『目的』が問われる時代」でご紹介したとおり、ハーバード・ビジネス・スクールのセラフィム教授らによると、企業が目的(パーパス)を掲げていること自体には財務業績との間に相関がありませんでしたが、パーパスがあり、かつ、マネジメントの期待や展望が明瞭・明快である組織について見ると、財務面でも優れた実績をあげているという結果であったとのことです。

組織全体としての目的を掲げるとともに、その実現に向けて、社員一人ひとりにどのような役割・貢献が期待されているのか、個々の仕事が全体の目的とどうつながっているのかの意味付けをすることが大切となります。

一方で、「やりがい搾取」とならないよう留意することも重要です。これは、東京大学の教育社会学者である本田由紀教授が指摘されたものです。社員にやりがいを意識させて働かせることで、本来支払うべき賃金を抑えるという行為です。社員のやりがいを大切にするとともに、その貢献に応じた報酬を支払うのは当然のことです。

■働く一人ひとりにとっての示唆

三人のレンガ職人の寓話は、働く側にとっても示唆を与えていると思います。普段、自分は何人目のレンガ職人の気持ちで働いているでしょうか。もちろん、上司の指示に従うことも、生活費を稼ぐことも必要なことです。しかし、せっかく人生の時間を費やすならば、意義のある仕事をしたいと思うものではないでしょうか。

もちろん、組織のなかで働くうえでは、与えられた役割を果たすことが求められます。たとえ、そうだとしても、その与えられた役割が、組織全体の目的とどう結びついているのか。そういったことを心の中で考えたり、あるいは、たまには、職場の同僚や上司・先輩と話をしてみてはいかがでしょうか。

日本能率協会が立教大学大学院の山中伸彦教授と共同で実施した「企業のイノベーション創出と組織活性化に関する実態調査」(2020年4月発表)によると、他社よりもイノベーション能力に優れている、あるいは、過去3年間の新製品・新サービスによる売上比率の高い企業では、「組織内で、自分たちが世の中にどう役立ちたいのかについて、日常的に会話がなされている」ことについて、当てはまる傾向が高いということが確認できています。

ドイツ語で「職業」は「ベルーフ(Beruf)」と言います。この言葉は、もともと「天職」という意味をもっています。自分自身の仕事の目的・意義は何なのか。誰もが、そうしたことを大切にする生き方を送れる社会としていくことが求められています。

一般社団法人日本能率協会
KAIKA研究所 近田高志

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