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SDGs 活用事例に学ぶ、企業理念と目標数字のひもづけ方

2021年1月12日

多くの企業がSDGs達成と企業の成長を連動させる取り組みを進めています。

しかし、自社の業種、事業とSDGsを紐づけて発想することが難しかったり、実現に向けて具体的な数値目標を立て、活動に落とし込むことができないといった悩みを抱えている担当者も少なくありません。

そんな時は企業理念や存在意義に立ち返り、SDGsを自社なりに捉え直すことが有効です。

今回はそれによって社内浸透の推進、事業の投資判断、新規事業の可能性が広がった、という企業のSDGs取り組み事例をご紹介します。

※この記事では一般社団法人日本能率協会が発行している機関紙「JMAマネジメント 2019年10月号」の掲載記事をご紹介しています。

「確たる未来」を見据えて

石川県小松市に本社をかまえるコマニーはパーティションの国内市場トップシェアを誇る企業です。
そんなコマニーさえ、リーマン・ショック後には不振に陥ったといいます。これを機に創業の精神に立ち返ったとき、見えてきたものとは・・・?

SDGsに取り組むことを決め、「コマニーSDGs宣言」を表明した背景、そして実際の取組みと成果について、コマニー常務執行役員・経営企画本部長の塚本直之氏(役職名は取材当時)に伺いました。

なぜSDGsなのか

2018年4月、当社は国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」に賛同し、「コマニーSDGs宣言」を表明しました。

パーティションの製造販売を主とする会社がどうしてSDGsなのか。ここには当社の経営理念がかかわっています。当社は1961年の創業以来、従業員一人ひとりの働きがいと成長を実現する「人間性尊重」の経営を続けてきました。

それがいつしか机上のものになっていたのもしれません。皆どことなく元気がなく、目標を達成する喜びも薄い、「血の通っていない」会社になりかけていた時期がありました。リーマン・ショックのあった2008年、創業から黒字続きだったパーティション事業がはじめての赤字を計上しました。それを取り戻そうとした翌年はさらに赤字が拡大。これが会社を一から見直す契機となりました。

当社は何のために存在しているのか、どうあるべきなのか。

2011年、私たちは創業の精神に立ち返り、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という新しい経営理念のもと、従業員の幸福を大切にする経営へと、あらためて舵を切り直しました。

その過程で社会貢献活動も始まりました。世の中の幸福に貢献し感謝されることこそ、私たちにとって一番の幸福だからです。

SDGsが国連で採択されたのはそんな折のことでした。SDGsは「誰一人取り残すことなく」「普遍的な平和の強化を追求する」ための目標。規模こそ違いますが、当社がめざすものと一致しています。いち地方企業である私たちでも、世界の平和と豊かさに影響を及ぼすことができるなら――そう願っての「コマニーSDGs宣言」でした。

「メビウスモデル」とは

コマニーSDGs宣言に際しては、従業員も「なぜ、パーティションの会社が?」という疑問を抱いたはずです。彼ら彼女らの理解を得て、SDGsの必要性を実感してもらうことが最大の課題だったかもしれません。

これまで手を替え品を替え、SDGsの理念を社内に浸透する取り組みを行ってきました。たとえば社内向けにSDGsの取り組みをまとめた「コマニーSDGs新聞」を3度リリースしました。

SDGsにかかわる具体的な活動内容は「SDGs∞(メビウス)モデル」にまとまっています。これは、SDGsが掲げる「2030年までに達成するべき17の目標」を達成するため「コマニーの事業でどんな課題を解決するのか」「ステークホルダーのどんな課題を解決するのか」を明確にしたモデルです。

たとえばSDGsの目標の1つに「住み続けられるまちづくりを」があります。これに当社は安心・安全な製品を提供しつづけることで貢献します。金沢工業大学との共同研究により開発した、震度7相当にも耐えられるパーティション「シンクロン」はその一例です。

新規附設ではなく従来品に「取り付ける」つくりにより省資源・低コストを実現したことも、従来の耐震性パーティションと異なる点です。リリース直後から「シンクロン」は好調、歴代製品のなかでも最速のスピードで受注をいただいています。

メビウスモデルはいわばSDGsを経営に実装するためのモデルです。これをもとに各部門が目標設定を行い、それがSDGsのどの目標に紐付いているのかを見える化し、達成状況を毎月チェックしています。

これは正直、骨が折れる作業です。しかし、毎月計画を振り返るたび、17の目標が解決された未来に近づいているように感じられます。

もたらされた変化

コマニーSDGs宣言からまだ2年足らずですが、当社にもたらされた変化は非常に大きなものがあります。

第一には、ビジネスチャンスの拡大だと私は捉えています。本来、まだ見ぬ未来を見据えて経営するのはきわめて困難でリスクが高いことです。しかし、SDGsによって2030年までにつくりあげるべき未来が確たるものになったおかげで、いまなすべきことも明確。これならば勇気をもって投資ができるのです。

結果、経営判断のスピードは上がり、社内のリソースを使うにあたっても、大胆に投資する分野とカットする分野といったメリハリが付けられるようになりました。そして思考が内向きから外向きへと変わりました。

ともすると「いまのお客さまにはこんなニーズがあるから、こんなパーティションをつくろう」と業界内だけを見る思考に囚われてしまうものです。いまは、「世の中でどんな問題が起きているのか」という視点から考えられるようになりました。

そうした問題を解決し、世界中の人々が自分らしく、生き生きと暮らせる社会に貢献するため、具体的な事業展開を進めているところです。

パーティション市場において当社はトップシェアの位置にあります。現状、SDGsに積極的な顧客企業が増えている一方、業界の対応は残念ながら遅れています。しかし当社がSDGsをいち早く推進し、成果を残すことで業界全体の水準を向上させられるはず。

同時に業績も伸ばすことができたら、「いいことをすれば儲かる」との認識も広まると期待しています。


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