仕事をしこうさくご

酸っぱい葡萄

【経営の羅針盤 2021年10月】

心理学で紹介される寓話の一つに「酸っぱい葡萄」があります。

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あるところに、一匹のキツネがいました。しばらくの間、何も食べておらず、とてもお腹が空いていました。歩いていると、目の前に葡萄畑がありました。
たわわに実った、おいしそうな葡萄がなっています。
腹ペコのキツネは、背伸びをしたり、ジャンプしたりして、何とか葡萄を食べようとしました。
ところが、葡萄は高いところになっていて、どうしても、葡萄を採ることができませんでした。
諦めたキツネは、立ち去りながら、恨めしそうにつぶやきました。
「どうせ、あの葡萄は酸っぱいに違いない。誰が食べるものか」
* * *

心理学では、自己正当化、自己防衛、合理化の例として、取り上げられる寓話です。自分の行動の結果、好ましくないことが発生した時に、人はストレスを感じます。そうしたストレスを回避し、自己を正当化するために、自分の当初の好みや推測をすり替えます。
酸っぱい葡萄のキツネは、最初は葡萄を美味しそうだと思っていたのに、葡萄を取れなかったという悔しさを紛らわすために、酸っぱくて、不味そうだと思っていたことにして、自己を正当化しています。

こうした、自己正当化の行為は、ストレスを軽減するための心の働きとして、必然的な機能であると言えるでしょう。しかし、こと、経営やマネジメントに関する行動においては、注意が必要です。
個人としてストレスを感じられることであっても、役割として、乗り越えなければならないこともあるからです。
現在は能力が不足しているために達成できないような目標があっても、目標自体を変えず、自身の能力不足を認めざるをえないこともあるでしょう。悔しさは残りますが、必要な能力を身に付けて、いつの日か、リベンジすることができるようになります。
あるいは、一人で悩んで、自己正当化をして諦めるのではなく、周囲に相談をして、協力や助言を仰ぐという方法もあるでしょう。案外、他の人の助力で簡単に解決してしまうこともあるものです。

特に、今日のように、変化が激しく、良かれ悪しかれ、想定外の結果がでるような状況だからこそ、状況を冷静に分析することが大切です。情報を恣意的に判断するのではなく、ネガティブな情報も収集し、結果を客観的に受け止めることが必要です。
自分が「酸っぱい葡萄」の状態になっていないか、自分自身や組織の心理的状態を見つめることが重要となります。

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KAIKA研究所 近田高志

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